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持続可能な農業生産の実現へ
「有機農業」という選択

（写真左上）乗用草刈機「ラビットモアー」　（右上）広川町の本社工場
（左下）オーレックグリーンラボ福岡　（右下）ORECの自社製品

「草と共に生きる」を理念に小型農業機械の開発、製造販売を中核事業にするオーレック。農に携わる企業の責任として環境に配慮した安全性の高い有機農業の普及拡大を目指し、独自ビジョンを掲げる。その達成に向け、本社工場拡張など設備投資を積極化。持続可能な農業構造を構築する。

生産者と消費者をつなぐ架け橋に

近年、米不足による大幅な米価上昇、円安に伴う輸入農産物や食料高騰が続き、安心·安全な農産物の安定的な生産の必要性は日々高まっている。特に、先進国の中でも日本は食料自給率が極めて低いとされ、不安定な国際情勢が増す中で、その解決は急務とし、農業分野においても持続可能性が求められている。
農林水産省では、2050年までに目指す姿として、脱炭素化や化学農薬使用低減、有機農業拡大などを政策とした「みどりの食料システム戦略」を打ち出しているが「企業一体となって取り組まなければ実現困難」と今村社長。同社独自の経営ビジョンとして「グリーン·イノベーション·カンパニー」を掲げ、食の安全·安心や地球環境保護への社会づくりを目指し、50年までに有機農業比率を50％に拡大する目標を立てた。
これは、国が設定する25％を優に超えた数字だが、「世界に比べ有機栽培の比率が低い日本は、生産の技術伝承を急ぐ必要がある」と高い目標を設定。有機農業の普及が遅れている理由に、栽培農家の認証の手間やコスト、消費者側の意識の違いもあり同社はその架け橋になっている。
それが生産者と消費者をつなぐ拠点「オーレックグリーンラボ」だ。現在、長野、弘前、福岡の3カ所にありショールーム以外に交流拠点として農に関わるイベントを展開。福岡はカフェスペースを広げ、メニューは有機栽培や地球環境に配慮した飲食を充実させ、地元生産者を集めたマルシェなどを実施。安心安全の生産過程を消費者に伝え、相互理解を深める一助になっている。

生産能力強化へ設備投資相次ぐ

中核企業のオーレックでは有機栽培の一つである草生栽培を機械でサポートし、日々進展するスマート農業を推進する。
そのため、今年から来年にかけて設備投資が集中し、生産能力と販売拠点の強化を図っている。具体的には、10年ぶりになる本社工場の拡張と最新塗装設備の増設、仙台営業所の移転拡大と物流拠点の併設、滋賀県彦根市に新たな営業拠点と物流拠点を出して販路を広げる。これらが25年度内に着工、26年に一気に動き出す計画だ。「先を見据えた新たな投資で農業現場の要望を先取りした製品開発、生産、販売、アフターサービスを充実させる」と今村社長。現場の声を製品に反映する姿勢は創業期から一貫しており、近年は自治体連携を通して、現場との接点を強固にし、地域を巻き込んだ農分野の課題解決に挑んでいる。

3万付与の福利厚生を導入

設備投資により現場DXも加速する。現場力を向上させるためデジタル化による省人化と効率化を推進。「人手を減らすのではなく、注力分野に人材を多く配置していく」と強調。研究開発における人材の確保を積極化しており、今回の設備投資では本社内の研究開発棟1棟を増設する。従業員はこの10年で2倍に増え、それと同時に人材教育や福利厚生、待遇面も整備。今年度から新たにカフェテリアプランを導入し、全従業員に3万ポイントを付与。ポイントの範囲内で用意された福利厚生メニューを選択利用できるようにし、ワークライフバランスを実践する。「自然に寄り添い、人を育て、事業を育て、グループ全員で持続可能な未来へ貢献する」を共有し、農業界の未来を切り拓く。

今村健二 社長 いまむら·たけじ／久留米市出身。1952年7月5日生まれの72歳。明治大学工学部卒。父が創業した大橋農機㈱（現オーレック）に76年入社。営業部に配属され関東から東北エリアを開拓。現場の声を反映した製品が大ヒット商品に。88年社長就任と同時に現社名に変更した。趣味は自然散策。座右の銘は「百閒は一感に如かず」

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（ふくおか経済EX2025年）