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ベトナム農機メーカー2社に部品供給  小倉鉄道    グリーンアジア特区の申請準備も


 北九州市小倉南区の歯車メーカー・小倉鉄道株式会社(木田文武社長)はこのほど、ベトナム南部に本社を置く農機メーカー2社にトランスミッションに使用される歯車部品の供給を開始、東南アジアでの事業展開を本格化していることを明らかにした。
 同社は井関農機など国内大手農機メーカーや建設機械メーカーなどにエンジンやトランスミッションに使われる歯車部品を生産する売上高約1億5000万円の中小零細メーカー。近年、取引先メーカーがアジア展開を進めていることや、受注単価が上昇しないことなどを背景に成長が続いている東南アジア地域での事業展開を考えていた。今回、同社は中小機構九州支部の「APEC中小企業CEOネットワーク強化事業」や、福岡県の「アジア中小企業経営者プログラム」など中小企業の海外展開を支援する国や県の支援制度を活用し、取引を始めた。
 今回、取引を始めた現地企業は、国営中核企業のベムコーポレーションのアンザン機械と、日本の本田技研工業と取引をしているキム・ビン社の2社。いずれもベトナム南部の最大都市、ホーチミン側に拠点を置く企業という。木田社長によると、アンザン機械とは農機のトランスミッションに使われる歯車部品、キム・ビン社とはトラクター後部に使われるテーラーといわれる部品の生産を受注、受注量はアンザン機械向けが月産1000台・出荷額ベースでは米ドル換算で15万ドル(約1400万円)、キム・ビン社向けは2万400ドル(約240万円)分の部品を受注しており、今後、量産に向けた準備を進めていくという。また、首都・ハノイがあるベトナム北部の農機メーカー・ナンブエンジンとも本格的な取引に向けた準備を進めているほか、インドネシアの自動車部品メーカーからも見積もりの依頼を受けているという。
 木田社長は「中小機構や県の支援プログラムを活用し、取引開始までこぎつけた」とした上で、「ベトナムでは農業の近代化が急速に進み、高性能かつ高品質の新型機械の需要がきわめて高い。現地企業は“中国製より1・5倍高くても日本製のほうが良い”という意識が強い。インドネシアからも見積もり依頼が来ており、ゆくゆくは独立系の日系部品メーカーとして存在感を発揮していきたい」と戦略を語った。今後、同社では外国人留学生の採用をより活発化させるほか、県などが進めているグリーンアジア国際総合戦略特区の申請準備を進めるなどアジア地域での事業展開を視野に入れた取り組みを積極的に進めている。
 同社は1906(明治39)年8月。資本金は2000万円。従業員数は15人。戦前は現在の日田英彦山線を経営する鉄道会社だったが、1945年8月の敗戦とともにGHQに接収、その後、当時の国鉄に営業を移管されたことで、歯車メーカーとして事業を続けている。木田文武社長は7代目。42年11月8日生まれの70歳。常盤高校―東海大学工学部卒。東芝系の真空メーカー勤務を経て、75年に入社。93年から社長を務めている。趣味はモータースポーツで国際A級ライセンス取得者。12年6月期の売上高は約1億5000万円、経常利益は約1000万円、今期は売上高が前年比60%増の約2億5000万円、経常利益は同2倍の約2000万円と増収増益の見通し。主要取引先の農機、建機メーカー各社が軒並み増産体制であることや、食品メーカーで使われている機械部品の受注が好調に推移していることが要因となっている。木田社長は「生産ラインはフル稼働の状況、今後、ベトナムやインドネシアからの受注を含めるとさらなる上積みが期待できる」としている。