INTERVIEW

経営戦略セミナー再開、非常時こそ“パートナー戦略”の検討を 日本M&Aセンター 中四国九州支社


東証1部に上場する業界最大手のM&A仲介会社、㈱日本M&Aセンターはコロナ禍において、より地域経済の発展に伴走するため、九州では熊本、鹿児島、大分にサテライトオフィスを6月末に開設し、福岡を含めた4拠点で無料戦略相談を積極化している。この11月には感染予防対策を徹底した上でいよいよ経営戦略セミナーを熊本、鹿児島、大分、福岡でも再開。「非常時の今、最も有効なのはパートナー戦略」と語る奥野秀夫執行役員中四国九州支社長兼福岡支店長に九州の経営者に向けた提言を聞いた。

九州4拠点体制で無料戦略相談を積極化

―福岡支店に加えて、熊本、鹿児島、大分に拠点を開設した狙いから聞かせてください。

奥野 新型コロナウイルス感染拡大の影響は、世界全体の経済活動にも大きな変化をもたらしており、これまでのビジネスモデルの延長線では企業は成長発展するどころか、生き残ることすら厳しくなります 。つまり、コロナ危機を境に、過去の経験則が全く役に立たない世の中に、変わってしまったと言っても過言ではありません。特に中小・零細企業にとっては資金面や事業承継に関する問題など、これまでの経営課題にコロナ問題が重なってくると、従来通りの経営戦略は通用しなくなります。今、苦境に立たされている地場企業の経営者が自社の経営課題に関してすぐに相談が必要な場合、近くで寄り添える体制づくりが重要だと考え、九州4拠点体制にしました。

―コロナを受けて緊急的に開設したのですか。

奥野 当社ではより地域を理解し、地域経済の発展に伴走するため全国に拠点を拡充してきましたが、この非常事態において当社が動き出さないと本当に企業の成長、発展はもとより、存続すらも危ぶまれるケースが増えてくるのではないかと考え、計画を前倒しして全国各地にサテライトオフィスを拡充しているところです。

―やはり、肌感覚で面談することは重要だと。

奥野 もちろん、遠距離でもオンライン面談ができる体制を整えていますが、それだけでは不十分ですし、経営者の方々も地元に自社の問題を気軽に相談できるコンサル会社が存在すれば安心できると思います。当社はもともと地域の金融機関や会計事務所などと提携して、業界でも革新的といえる全国ネットワークを構築し、地場企業の経営課題に関するニーズを汲み取った戦略で成長してきました。今回のサテライト戦略は、これまで築いてきたネットワークの方々とさらに連携を強化する狙いもあります。

―九州で3拠点を増やし、3カ月が経ちましたが、手応えは。

奥野 各拠点での無料戦略相談が奏功し、当社全体でも、中四国九州支社としても、譲渡も買収も受託件数が過去最高を更新しました。それだけ悩んでいらっしゃる経営者の方が多いということの証左であり、何より平常時と比べて相談に来られる経営者の方々の覚悟が格段に違うということを実感しています。

左から熊本オフィスの椛田國仁リーダー、鹿児島オフィスの狭川行正リーダー、大分オフィスの仲田理リーダー

 

非常時に最も有効な“パートナー戦略”

―今回のコロナ禍のようなゲームチェンジを起こし得る非常時において有効な戦略として“パートナー戦略”の検討を は提唱しています。

奥野 当社はM&Aの仲介会社ですので、例えば後継者を見つけるためにM&Aを推奨する、あるいはさらなる成長を促すためにM&Aを提案してきました。しかし、この非常時において有効で、且つスピード感をもった戦略は極めて限られており、“危機に強い会社”になるためには、自社単独で経営戦略を実践していくのではなく、パートナーを見つけて、その相手としっかりと手を組んで次なる展開を考えていく、“パートナー戦略 ”が最も有効と考えています。

平時ならいざ知らず、非常時は経営判断を先延ばしできず、即時に対応しなければなりません 。誰も経験したことがない非常時だからこそ、パートナー戦略の必要性に拍車がかかっており、これにより、企業は勝ち組みとなり、 さらに危機に強い会社に革新することができます。

―他社の傘下に入ることに抵抗感のある経営者も多いと思います。

奥野 オーナー経営者の立場からすると株を手放すという選択を迫られますし、その抵抗感が日本の事業承継がなかなか進まない要因の1つでもあります。ただ、企業にとってM&Aとは成長するための経営戦略の1つです。自分の株を手放すか否かという考え方ではなく、本当の意味での会社の成長とは何かを考えることで大きな未来が開けていきます。現在は、大手のグループに入り、結果的に株を手放すことになっても、引き続き経営者として陣頭指揮を執るというケースが非常に増えていますからね。

国内最多のM&A仲介実績を生かす

―御社はM&A仲介実績で国内最大手でありますが、その強みを生かすというわけですね。

奥野 当社は単なるM&Aの仲介だけではなく、企業の経営そのものに携わりながら事業を展開しています。具体的にはM&A後の会社の経営戦略なども一緒に考えていきますし、逆に会社を譲渡する場合には、譲渡前の3~4年というスパンで会社の方向性を見定めた上で、譲渡の準備を進めていきます。

また上場企業だけではなく、国内の中堅・中小・零細企業を中心としたM&A仲介を取り組んでいる点が特徴で、フェイス・トゥ・フェイスで相談に応じることができる点も強みだと思っています。先述の通り、地域金融機関や会計事務所をはじめ同業他社にはないネットワークも強みです。現在は大手の金融機関とも提携をしています。

―先ほどのパートナー戦略においても最適な相手先を紹介できるということですね。

奥野 その通りです。例えば、同じ県内企業同士のマッチングだけでは本当に最良なお相手といえる有効なM&Aにはなりません。日本全国で条件に合った最良のお相手を見つけることができる点もメリットで、当社の情報量は日本一だと自負しています。直近の成約実績は年間885件、累計では6千件超で創業以来一度も減少することなく増え続けており、現在は世界一の実績を目指しています。

11月、熊本、鹿児島、大分、福岡で経営戦略セミナー再開

福岡支店M&Aコンシェルジュの石橋愛理さん

―九州では2016年に福岡営業所を開設し、翌年には支店に昇格させていますね。

奥野 拠点開設以来、九州での成約実績も右肩上がりで増加中です。各県の銀行や会計事務所から当支店に出向で来られているケースも多く、ニーズの高さが分かります。また、陣容は当初の8人から現在は約20人になりました。

―開設した3拠点ではどういった展開をしているのですか。

奥野 3オフィスのリーダーには当支店の精鋭を配し、彼らを中心にスタッフ3~4人体制で、まずは地元の経営者向けに緊急無料相談をしっかりとやっています。将来的には、人員や機能を拡充しながら営業所に格上げできればと考えています。

―11月からは福岡を含め4拠点のある九州の都市で経営戦略セミナーを再開します。

奥野 しっかりと感染予防対策を徹底した上で、11月16日に熊本、17日に鹿児島、18日に大分、19日に福岡の各ホテルで開催するほか、オンラインで同時配信します。内容は、第1部では、福岡では私、それ以外は各拠点のリーダーが「加速する事業承継とM&A」について、第2部では当社の栗原弘行成長戦略部長が「いま、選択すべき成長戦略 ―M&AとIPO―」について講演します。また、第3部では、M&Aで会社を譲渡された元オーナーの体験談として、前・㈱樽味屋社長の矢下善生氏にご登壇いただきます。

―最後に九州の経営者にメッセージをお願いします。

奥野 売却を考える方は取り組む決断を早くすること。買収を考える方は一本足打法から脱却できる相手探しが重要だということ。そして、何よりも伝えたいことは、九州全域の経営者や企業をこのコロナ禍における危機から救いたいという思いです。もちろん、M&Aはすぐに成立するとは限りませんが、経営危機に直面した際、決してお一人で悩まれずに、まずは身近に存在する当社にお気軽に相談していただきたいです。そのきっかけとしてセミナーにご参加いただければと思っております。一緒に最善の未来について考えていきしょう。

セミナーの申し込みは  https://www.nihon-ma.co.jp/seminar/

               

奥野秀夫 執行役員中四国九州支社長兼福岡支店長

愛知県出身。1974年8 月6 日生まれの46歳。筑波大学体育専門学群卒。97年4月住友(現三井住友)銀行入社。2005年2月日本M&Aセンター入社。中堅中小企業の事業承継型M&Aに加え、同社初の海外M&A、ファンドによる上場企業のTOB案件等、数多くの成約実績を誇る。08年から部長職としてチームマネジメント中心に活動し、今年4月より現職。中四国~九州全域の営業統括と併せて会計事務所ネットワークの全国統括責任者も兼務する

 

㈱日本M&Aセンター 〒100-0005 東京都千代田区丸の内1-8-2 鉄鋼ビルディング24階 設 立/1991年4月 資本金/25億円 事業内容/中堅中小企業のM&A支援 従業員/638人 売上高/324億円(2020年3月期連結) 拠点/東京、大阪、名古屋、福岡、札幌、広島、沖縄、シンガポール、インドネシア、ベトナム、マレーシア

中四国九州支社・福岡支店 〒812-0011福岡市博多区博多駅前2-2-1 福岡センタービル9階 TEL.092-686-9279(代)

熊本オフィス熊本市中央区下通1-3-8 下通 NS ビル 6 階(Regus熊本下通) TEL.096-241-9452

鹿児島オフィス/鹿児島市西千石町11-21 鹿児島MSビル5・6階(Regus鹿児島天文館センター) TEL.099-808-3398

大分オフィス/大分市府内町3-4-20 大分恒和ビル4階(大分OpenOffice) TEL.050-6865-3720