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ふくおか経済EX 2021

(有)久松


ECコンサル伸長し、売上高25億円突破へ

松田健吾 社長
まつだ・けんご/福岡市出身。1979年10月18日生まれの41歳。福岡工業大学付属高校卒。18歳の頃から家業の仕出し屋「久松」で働き、24歳でおせちのネット販売に参入。以降、販売戦略、製造設計、経営戦略を立てる同社の屋台骨。2019年5月社長就任。趣味は飲食店巡り

来年創業30周年を迎える久松では、新たに始めたECコンサルティング事業が大きく飛躍し、今期過去最高となる売上高25億円を見込んでいる。今後も同事業を主力のおせちセットに続く事業の柱に据えて、『毎日がハレの日』を提供する総合食品企業として、さらなる成長を遂げようとしている。

受注システム導入で生産性向上

年末年始におせち16万個を販売する久松では、今期売上高で過去最高となる25億円を見込んでいる。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う巣ごもり需要、EC市場の拡大で、同社のおせち販売個数は堅調に推移。2019年の社長就任以降、松田社長が刷新してきた「母の日」「父の日」「敬老の日」向け商品など、主力のおせちセットを除く既存商品も、着実に販売を伸ばしている。
「昨年本格稼働させた受注管理システムが機能し、導入後は既存業務を約2〜3割削減。人員やリソースを、新設した商品開発と販売促進の部署に集中させたことで少しずつ結果に結びつき、社内に好循環が生まれている」と説明する松田社長。
同社では長らく主力のおせちが売り上げの大半を占めてきたが、今年度から取扱件数を積極的に増やし、おせちに続く人気商品の発掘・開発に注力する。「新商品で獲得した顧客に対して年末のおせち販売も案内することで商品同士のシナジー効果を高めたい」と語る。
また、おせちセットの販売を委託する協力会社の拡大、中途社員の採用による人員の再構築、製造現場での生産性向上など、EC事業を支える課題にも積極的に取り組むことで、3年以内に大台となる売上高30億円を目指す。

同社主力商品のおせちセット。写真は一番人気の「博多」(税込み15,800円)

福岡の魅力、EC通じて全国発信

増収増益の大きな要因には、昨年から本格的に開始した、ECコンサルティング事業の飛躍がある。
現在同社では、コンサルティング事業の一つとして、楽天市場でECサイトを受託運営。同サイトは、新型コロナウイルス感染症拡大による百貨店での福岡物産展の開催中止、店舗販売の休業などで、売上が減少した県産の加工食品や工芸品の生産・販売業者の商品を販売し、販売額は当初を上回るペースで伸びているだけでなく、経営環境の変化に苦しむ事業者の一助となっている。
同事業を受託できた背景には、EC参入以降、着実におせちの販売個数を伸ばしてきた同社の実績が評価されただけでなく、前述した自社開発の受注管理システム導入後、一日あたりに受注できる業務量が飛躍的に向上したことが大きく関係している。
「当初コンサルティング受注を視野に入れたシステム運用ではなかったが、結果的に事業を拡大するきっかけになった」と話す松田社長。同システムは食品メーカーとしてEC事業に進出した同社のノウハウが詰まっており、コロナ禍で事業転換を図るためにEC参入を目指す企業との相性も良く、今後も同様の仕組みを生かして企画・デザイン・管理を請け負っていくという。「 “とことん地元ファースト”のECコンサルティングで課題解決をサポートし、福岡の魅力ある商品や文化を県外に発信していきたい」と目標を語る松田社長。
これまで『ハレの日』の美味しさを提供する企業として成長を続けてきた同社も来年創業30周年。「お客様に『毎日がハレの日』を感じてもらえるよう、総合食品企業の実力を磨いていきたい」と新たな歩みを進める。

同社社員と松田健吾社長(後列中央)。現在は人材育成に注力するため新卒採用を停止しているが、数年後をめどに再開する予定

 

【DATA】
所在地/〒811-2304 糟屋郡粕屋町大字仲原2839-7
博多オフィス/〒812-0012 福岡市博多区博多駅中央5-14 7F
TEL/092-260-1313
FAX/092-260-1880
創  業/1982年9月
設  立/1986年8月
資本金/300万円
事業内容/婚礼食材、お惣菜食材の製造・販売、おせち料理メニュー製造販売・提案
年  商/25億円
従業員/96人(パート含む)
出  先/博多オフィス
URL/http://hisamatsucorp.jp

(ふくおか経済EX2021年)