FEATURE

ふくおか経済EX 2011

医療法人済世会 河野病院グループ


『にじいろプロジェクト』
合言葉に心を病んだ患者の社会復帰を支援

「受診して良かった」と思われる患者視点の医療を目指して

糟屋郡篠栗町の「河野病院」をはじめ福岡市内近郊で3つの精神科専門病院などを運営し、60余年の歴史を持つ医療法人済世会 河野病院グループは、2005年に2代目として河野正美理事長が就任以降、『にじいろプロジェクト』を合言葉に多くの心を病んだ患者の社会復帰を支援できる施設づくりに取り組んでいる。
昨年2月には、福岡市中央区薬院4丁目に復職デイケア併設の「薬院河野クリニック」とセカンドオピニオン施設「メディカルサポート薬院」を同時オープン。さらに来年3月完成予定の「河野粕屋病院」(糟屋郡宇美町)新病棟にはストレスケアルームや認知症対応の施設を取り入れる。
「多くの患者の方々が雨上がりのの空にかかる“にじ”を見たときのように、すがすがしい気持ちになっていただけるような病院づくりを目指したい」という河野正美理事長のもと、医療法人済世会の『にじいろプロジェクト』はさらに進化を遂げようとしている。

故河野正氏が1946年に創設、
篠栗・名島・宇美に精神科病院展開

医療法人済世会 河野病院グループは、河野理事長の父・故河野正氏(1914〜2007)が1946(昭和21)年6月、篠栗町に開業した診療所が前身だ。正氏は九州医学専門学校(現久留米大学医学部)を卒業後、同校の助手となり、後に九州帝国大学(現九州大学)医学部に移って、脳の研究に従事していた。太平洋戦争から復員後、九州帝大に戻るも、当時、医療機関がなかった篠栗の地において、外科医の実弟と診療所を開設。専門の精神科に止まらず、あらゆる診療を手掛け、戦後間もない地域医療を担っていたという。
51年に医療法人済世会を設立し、同診療所は河野粕屋病院(現河野病院)となると、57年には福岡市東区名島4丁目に河野名島病院を開設。さらに82年には河野粕屋病院を糟屋郡宇美町に移転し、現在の河野病院を河野粕屋病院跡に開設した。
現在、河野病院はCTや内視鏡、エコーといった設備も整えているほか、歯科医も常勤し、身体合併症や口腔疾患の予防や治療にも力を入れている。また、河野病院や河野名島病院では、デイケアセンターやグループホームなども併設し、患者の社会復帰を、さまざまな形でサポート。現在、3病院のベッド数は569床を数え、医師や看護師などスタッフは400人近い体制を整え、福岡都市圏で有数の精神科医療機関となっている。

2代目・河野正美理事長のもと
「にじいろプロジェクト」推進

河野正美理事長が現在推し進める『にじいろプロジェクト』。それは、ひと昔前の「精神病は治らない」「入院=閉じ込める」といった精神疾患に対する間違った認識を払拭するとともに、心の風邪とも言われ、近年大きな社会問題となった「うつ病」や、高齢化社会でさらに大きな課題となる「認知症」をはじめ、統合失調症などストレスの多い現代社会に巣くう精神疾患について、多くの人が気軽に相談し、治療できる医療機関を目指したものだ。
「言わば、精神症状が悪くなった時期を“雨降り”に例えて、患者が雨上がりの空にかかる“虹”を見た時のように、すがすがしい気持ちになってもらおうという取り組み」だ。
例えば、河野名島病院入り口に08年5月にオープンした「にじいろベーカリー」。ここでは、就労経験が乏しいものの、「少しずつ仕事の練習をしてみたい」という精神科の患者を訓練生として採用。カフェスペースも設けており、子ども連れの主婦から年配の方まで、来店する地域の人々とのコミュニケーションを経験してもらう場所になっている。
また、09年5月に同病院内に設置した「プレミアム ルーム」は、通常の病室と異なり、ホテルの一室のような落ち着いた空間を演出。DVDやパソコンも完備し、入院することで生活の環境を変え、ゆっくりと休養することに主眼を置いた治療ができる設備を整えている。

河野名島病院入り口にある「にじいろベーカリー」

 

都心部に「薬院河野クリニック」開設
内科も拡充し“街の家庭医”目指す

そして、『にじいろプロジェクト』の真骨頂ともいうべき施設が、昨年2月にオープンした「薬院河野クリニック」だ。そもそも「街中に精神科クリニックが必要な時代が必ず来る」と予想していた創設者の故・河野正氏。河野理事長にとって同院は亡き父の遺志を継いだ念願の福岡都心部進出であり、また現代のストレス社会に則した理想の治療を実践する施設となっている。その1つが、同院に併設する復職デイケア室。「うつ病を患った方が退院後、すぐに復職できるとは限らない」と都心の同院に通いながら、徐々に復職できるまでのプログラムを提供。
同院では今年4月から新院長を迎え、一般内科にも力を入れて診療範囲を拡大し、誰もが気軽に訪れることのできる“街の家庭医”として、うつ病に限らず、内科疾患や認知症相談にも対応していく。

来年完成の河野粕屋病院新病棟に
ストレスケア室や認知症対応施設を

さらに同法人では、医療施設耐震化対策の補助金を活用し建て替え、来年3月完成予定の「河野粕屋病院」新病棟にも、『にじいろプロジェクト』の思想を随所に散りばめる。約3万4000㎡という広大な敷地と、博多湾からヤフードームまでを一望できる自然環境の良さに加え、「新病棟にはストレスケア室や認知症対応施設を設け、新しい取り組みをしていきたい」という河野理事長。
かつて亡き父が「精神病患者のユートピアをつくりたい」と開設した同院。時代が変わり、精神疾患に対する治療や認識が変わるなか、この地でも、さらに患者の社会復帰をサポートする『にじいろプロジェクト』を推し進めていく方針だ。

河野 正美 理事長
かわの・まさみ/東京都出身。1961年6月30日生まれの49歳。九州大学大学院にて医学博士号授与される。九州大学病院精神科勤務を経て、98年4月より医療法人済世会河野病院(糟屋郡篠栗町)院長。2005年7月医療法人済世会理事長に就任。福岡県精神科病院協会副会長など歴任し、現在福岡県病院協会理事、粕屋医師会理事。趣味は野球観戦、ゴルフなど。最近は「iPad」での読書にハマっているそうで、蔵書は1000冊を超える

 

企業DATA
所在地 (本部)〒811-2413 糟屋郡篠栗町大字尾仲139
TEL 092-947-0611
FAX 092-947-8598
創業 1946年6月
設立 1951年7月
事業内容 病院の運営(精神科・神経精神科、内科、社会復帰施設)
医業収益 24億円(10年3月期)
代表者 河野正美
従業員 374人
拠点 河野病院(篠栗町)、河野粕屋病院(宇美町)、河野名島病院(福岡市東区)、薬院河野クリニック(同中央区)他デイケアセンター・グループホーム等
関連会社 ㈱ユーティリティー、NPO法人にじいろ福祉会
URL http://www.kawano-hp.com

採用情報
募集職種 内科医、正・准看護師
問合せ先 TEL.092-947-0611
担当 法人本部理事長室

(ふくおか経済EX2011年)