FEATURE

ふくおか経済EX 2019

㈲久松


新ブランド・卸事業を集中的に強化

博多久松ブランドでおせちセットを販売する同社では、同ブランド以外では初となる自社サイト「food&hall」を楽天市場に開設。EC参入以来15年間で培ったノウハウを駆使して、第二の柱として事業を拡大していく。また、協力企業におせちの販売を委託する卸事業にも注力し、着実に販売先を増やしている。

強み生かした新ブランド始動

正月の“ハレの日”を彩るおせちセットを販売する久松は、11月から食料品の販売サイト「food&hall(フードホール)」をECモール「楽天市場」内に開設した。同社が「博多久松」以外で立ち上げた初となるサイトで、ネット上で反響の大きい県産のイチゴなど、九州を中心としたメーカーや農家が生産する食品、調味料を中心に取り扱う。
これまで自社生産のおせちを主力に販売してきた同社だが、新規事業として今回のサイトを手がけ、おせち部門以外の事業の底上げを図る。松田常務は「食材・食品をインターネットで購入する『EC可率』は、椅子や机などのインテリア部門と比べると1/5程度に留まる。裏を返せば、食品のECを使った販売には伸びしろが残っており、“売れる“商品の開発段階から手がけていきたい」と意気込みを語る。

卸事業を強化し、販売数増目指す

今年でEC事業参入から15年が経つ同社では、昨年から広告戦略や新商品の開発など “本丸”を取り巻く環境の再整備を推し進めてきた。特に卸事業では、おせちの販売を委託する協力企業の数が2年前の倍以上となる40社に拡大するなど、着々と成果が生まれている。
県内を中心に知名度やブランドを確立したことが第一だが、卸し数増加の背景には、さまざまな業種の企業が、自社の販売チャネルを生かしてユーザー向けに食品や生活用品を販売するビジネスモデルが浸透したことが挙げられる。その中でも、正月商戦の目玉となる「おせち」への引き合いは大きく、強いブランド力と高いリピート率を誇る同社への発注が年々増加しているというわけだ。
松田常務は「工場内業務の効率化が奏功し、製造個数を年々引き上げているが、現在大半を占めるECや通販だけに販売を集中するのはリスクが高い。今後は卸事業での製造個数を伸ばすことで販売先の平準化を進め、経営の安定化を目指したい」と話し、卸事業の飛躍に期待を込める。

同社主力商品のおせちセット。写真は一番人気の「博多」(税込み15,800円)

外部から人材招き経営改革進める

昨年末発生した、北海道地域に一部商品が配達できなかった問題を重く受け止め、再発防止や業務の改善に現在取り組む同社。松田常務は「会社の存続に関わる経営リスクは、何時生じてもおかしくない、と再認識した」と今回得た多くの教訓を話す。
急成長した企業の中には、成長にバックヤードの強化が追いつかず、内部に少しずつ問題を蓄積するケースが多く見られる。同社も例外ではなく、内部システムの構築や新卒採用を含む新たな人材獲得などを進めてきたが、今年からは本格的に経営改革に乗り出すことになる。
以前と違うのは、社内だけでなく外部から専門的な知識を持つ人材を招聘し、中・長期に分けて経営課題に取り組んでいく点。「社内でも今回の問題を機に危機感が共有された。新たな挑戦をしつつも既存業務の手綱を締めて、会社を成長させていきたい」。松田常務は力を込めた。

同社社員と松田健吾常務(後列中央)。現在は人材育成に注力するため新卒採用を停止しているが、数年後をめどに再開する予定

【DATA】
所在地/〒811-2304 糟屋郡粕屋町大字仲原2839-7
博多オフィス/〒812-0012 福岡市博多区博多駅中央5-14 7F
T E L/092-260-1313
F A X/092-260-1880
創 業/1982年9月
設 立/1986年8月
資本金/300万円
事業内容/ 婚礼食材、お惣菜食材の製造・販売、 おせち料理メニュー製造販売・提案
年 商/18億5,700万円
代表者/松田久美子
従業員/96人(パート含む)
出 先/博多オフィス
U R L/http://hisamatsucorp.jp

(ふくおか経済EX2019年)