FEATURE

ふくおか経済EX 2010

㈱九電工


「ベイサイドプレイス博多」3月11日グランドオープン

(写真)CO2排出削減事業をスタートした北山カントリー倶楽部

昨年12月に創立65周年を迎えた九州トップの総合設備工事業、㈱九電工の橋田紘一社長は、新年度にあたり「次の70周年、80周年に向けた新しいスタートの時。20年、30年先の“九電工のありたい姿”を描き、そこに到達するための5年、10年先を見据えた目標が必要」と語る。
その第1ステップとなる新中期経営計画についてのキーワードとして挙げているのが「高収益体制の再構築」、「拡大再生産の実践」「人財育成の推進」の3つだ。
「高収益体制の再構築」に関しては、工事の需要が見込まれる東京、大阪、沖縄のさらなる営業強化、足元の九州においては地域密着度を高めた、強い営業所づくりを柱とする地固めを軸に、技術力・技能力・提案力を下地に利益率の高い工事受注を進めていく。
「拡大再生産の実践」について橋田社長は「『均衡縮小』ではなく、需要のある分野に進出して、約8,000人の従業員を抱える九電工グループを成長、発展させていく」考えで、具体的にはエコ関連事業やPFI事業などへの積極的な取り組みを挙げる。

2月に完成した沖縄支店新社屋

エコ事業への取り組みを本格化

社会的に関心が高まっている「環境」に関わるエコ事業は、鳩山政権が打ち出したCО225%削減目標とも相まって、新たなビジネスチャンスとして注目を集めている。同社もこれまで培ってきた技術力、研究開発力、提案力を駆使してこの分野への進出を開始した。
今年1月には、グループで運営する佐賀県の北山カントリー倶楽部で高効率ヒートポンプを活用したCО2排出削減事業をスタートした。空調、給湯で使用する重油の消費量を減らすことでCО2排出を削減、これによって得たクレジットを九州電力に販売する形で、国内クレジット制度に基づく排出削減事業として同業で初めて認証されている。従来比でCО2排出量は半減、年間のエネルギーコストも1000万円ほど削減しており、今後推進するエコ事業のモデルケースとして、顧客に提案していく考えだ。
今年2月に完成した沖縄支店の新社屋にも、エコ事業への志向性が色濃く表れている。新社屋には、沖縄の琉球瓦を使って地元色を出し、1階に展示コーナーを設置して最先端の技術や情報を発信するとともに、エコ事業を意識した省エネ設備も徹底的に取り入れた。また、エネルギー消費量を削減する同社の総合ビル管理システム「Q‐BEMS」や太陽光発電システム、乾燥剤を用いて湿度制御するデシカント空調設備、雨水ろ過再利用システム、気化熱で気温を下げるドライミストを導入するなど、いわば「社屋そのものがPR施設」といった趣がある。
本社もLED照明や「Q‐BEMS」を導入するなど省エネ化を進めている。4月1日には「省エネ宣言」をおこない、これらの取り組みをお披露目する。本社や沖縄支店、また北山カントリー倶楽部も含めて、自社の取り組みそのものをエコ事業のPRツールとして活用していく。

3月リニューアルオープンした「ベイサイドプレイス博多」

第一次産業へのアプローチも開始

「環境」に関連するという意味で、資源循環やCО2削減等のエコ事業の延長線上にある第一次産業へのアプローチもスタートした。第1弾として、熊本県、天草市、地元などの協力を得ながら、天草市でのオリーブパイロット事業に着手する。
今年3月末から4月初旬に植樹し、3年をかけて、試験栽培、加工、商品開発、販路開拓、契約栽培先開拓等の事業性の検証をおこなう。橋田社長は、「国内産オリーブオイルは国内消費量の0.3%で、大部分を輸入に依存している。健康志向や安心・安全な食材需要の高まりもあり、オリーブ関連商品の市場は拡大するのではないか」と期待を寄せている。
また、3月11日に全面リニューアルした「ベイサイドプレイス博多」の目玉のひとつである「博多松金市場」では壱岐で獲れた魚を販売、壱岐の魚のブランド化を後押しする。
橋田社長は、「第一次産業もエコ事業の延長線上で取り組んでいる。農業や水産業に従事する人たちの所得を増やす手助けとともに、食糧の自給率アップや後継者育成、休耕地対策などで地域に貢献したい」という考えだ。
3つ目のキーワードである「人財育成の推進」では、08年に「人財開発元年」と謳って人財開発部を設置し、09年に人財育成憲章、若年者の育成計画を制定して、現在それに沿って人財育成を実践している。
「わが社の宝は従業員であり、各人の能力を高めることが企業価値の向上に繋がる」と考えており、これは先の「拡大再生産」にも関連する。5〜10年先の中期的な展望としてアジアなど海外市場への進出も視野に入れており、技術・技能の向上はもとより、英語や現地語の語学力習得も含めた人財育成を考えている。

橋田 紘一 社長
はしだ・こういち/福岡市出身、1942年9月29日生まれの67歳、県立修猷館高校—慶應義塾大学経済学部卒業。66年九州電力㈱入社、91年熊本支店次長、93年経理部次長、96年宮崎支店長、97年理事宮崎支店長、98年理事総務部長、01年常務取締役、07年6月㈱九電工社長就任。趣味は柔道・音楽鑑賞

 

企業DATA
所在地 〒815-0081 福岡市南区那の川1-23-35
TEL 092-523-1691
FAX 092-524-3269
創業 1944年12月
資本金 79億188万円
事業内容 総合設備工事業
年商 2,453億8,800万円(09年 3月期連結)
代表者 橋田 紘一
従業員 7,627人(09年3月末現在連結)
出先 東京本社、福岡、北九州、大分、宮崎、鹿児島、熊本、長崎、佐賀、大阪、沖縄
関連会社 ㈱キューコーリース、九州電工ホーム㈱、㈱昭電社他
URL http://www.kyudenko.co.jp

(ふくおか経済EX2010年)