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ふくおか経済EX 2012

イフジ産業㈱


設立40周年を迎える独立系トップの液卵メーカー

今年10月に設立40周年を迎えるイフジ産業㈱。積極的なM&Aで全国にエリアを広げ、独立系トップの液卵メーカーに成長した。09年11月には粉末調味料メーカーを加えたグループ展開を開始。創業当初からのベンチャー精神でさらに進化を目指す。

“浮利を追わず”の精神で独立系最大手に成長

設立から40年を振り返り、藤井社長は次のように語る。「特に最初の7〜8年はヒト・モノ・カネのすべてに苦労した。社員が低賃金で長時間労働に耐えて頑張ってくれ、どんな逆境にも経営理念の“浮利を追わず”の精神を守って本業に徹してきたからこそ今がある」。わずか3人の社員で立ち上げ、ヒト・モノ・カネとも一つずつ積み上げてきた創業者の思いを伝える。
設立2年後には巨大消費地関東に営業進出、10年後には生産拠点も確立した。その後は積極的なM&Aで中部、関西とエリアを広げ、規模を拡大してきた。「九州から東上するのではなく、まず最大市場の関東に進出し、その信用と実績を基盤に南下してきたことが結果につながった」と振り返る。
01年5月関東に新工場が完成。8月には現大阪証券取引所ジャスダック市場に上場し、設立からの夢を果たした。「当初から上場を公言してきたものの、実感したのは上場の2〜3年前だった」と笑う。
04年にはHACCPの考え方に基いた最新鋭の関西工場が完成。生販統合システムも導入し、独立系最大手の地位を確立した。

設備を更新した日本化工食品の造粒ライン

リスクに強い経営体質を確立

上場後は順風満帆と思われたが、その後も鳥インフルエンザの発生やリーマンショック、東日本大震災と不測の事態が続く。「その度に悔しい思いもしたが、逆境をバネに危機管理体制を整えることができた」とリスクに強い経営体質を築き上げた。
今回の震災では関東工場が被災。生産中止に追い込まれたが、翌日には他の3工場の増産で不足分を補う供給体制を整えた。被災地への物資供給のため社会的使命を果たした。その後は当初予想を大幅短縮し、5月6日には全面復旧。震災の影響を最小限に止め、第3四半期でも前年同期を上回る利益を確保した。

日本化工食品の開発スタッフと藤井専務(中央)

ベンチャー精神で新たな挑戦

子会社の日本化工食品㈱を加えたグループ経営も軌道に乗った。今期は、その子会社の生産設備を更新。「営業のリードタイムを短縮できたことで、受注拡大にも対応できるようになった」(藤井宗徳専務)と、将来を見据えて体制を整えた。
一方、本体の液卵事業では、製菓適性に優れた全卵の新製品を開発し、昨夏から関東で販売を始めた。「製菓用卵白」や低カロリー・ノンコレステロールの「茶わん蒸しベース」に続く高機能・高付加価値商品の開発で、トップメーカーの地位に甘んじることなく、創業当初からのベンチャー精神を貫く。
また、子会社を含めた全営業マンにスマートフォンを支給し、業務の効率化とクラウドによる情報共有化を図る。差別化しにくい商材の液卵業界で高いシェアを確保している背景には、こうした先端システムの導入もある。
ジャスダック上場から10年の節目に当たる昨年8月には、地元・福岡証券取引所に上場。「今まで育てていただいた福岡・九州の活性化に微力ながらも貢献したい」と抱負を語る。養鶏場経営から独立系トップの液卵メーカーに成長し、地元に根を下ろした同社。設立40周年の節目を機に、また新たな挑戦が始まる。

藤井 徳夫 社長
ふじい・とくお/1941年2月13日生まれの71歳。中国、天津生まれ。九州大学法学部卒業直前に父親が急死、卒業後は家業の養鶏場を継承する。養鶏場から液卵加工業への転換を進め1972年10月に同社を設立、以降積極的なM&Aなどにより全国展開を推進する。2001年には、現大阪証券取引所ジャスダック市場に株式上場。趣味は読書

 

企業DATA
所在地 〒811-2312 福岡県粕屋郡粕屋町戸原200-1
TEL 092-938-4561
FAX 092-938-5537
URL http://www.ifuji.co.jp/
創業 1964年4月
設立 1972年10月
資本金 4億5,585万円
事業内容 液卵・冷凍卵の製造および販売、鶏卵加工製品全般・その他惣菜食品の販売
年商 117億4,252万円(11年3月期連結)
代表者 藤井徳夫
従業員 91人(11年3月末現在)
出先 (工場)福岡工場(本社)、関東工場(水戸)、関西工場(京都)、名古屋工場(安城)
関連会社 日本化工食品㈱、㈱春日ビル

(ふくおか経済EX2012年)