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30年ぶりの2けた上場も「単独上場企業の増加を」 福岡証券取引所


週刊経済2026年1月28日発行号

犬塚理事長、インタビュー抜粋

12月1日に福岡証券取引所(福岡市中央区天神)の理事長に就任した犬塚雅彦氏は、本誌2月号「表紙の人」の取材に応え、30年ぶりに新規上場が2けたを上回った活況の背景や、さらなる機能強化に向けた展望を語った。以下、インタビューを抜粋。

―12月1日に福証の理事長に就任した。まずは就任の抱負を。

犬塚 西日本唯一の証券取引所の運営の舵を任されるということで、まさに身の引き締まる思い。同時に、地域社会に少しでも貢献したいという強い思いを持って、この職務をお引き受けした。最盛期には全国9カ所に証券取引所が置かれていたが、再編・統合の流れの中でその多くがなくなり、現在は東証も含めて国内に4カ所しかない。福証も存続が議論された時期もあったが、1998年に地元政財界、行政が一体組織、「福岡証券取引所活性化推進協議会」を発足し、地域に必要なインフラと定義づけた。地元に求められ、大きな期待を背負って存続してきた歴史を持つ証券取引所なので、私もその期待に応えられるよう、地域へのさらなる貢献と発展を目指してしっかり取り組んでいきたい。

―九電出身の理事長は6代連続だ。

犬塚 かつて理事長を務められた故・川村正喜理事長や故・奥井洋輝理事長は、私が九電の経理部にいた頃に、温かくご指導いただいた大先輩。就任の打診を受けた際に、「しっかりやれ」とお二人から叱咤激励されているような気持ちになり、改めて気が引き締まった。

―2025年の福証の実績を振り返って、どのような1年であったか。

犬塚 前年からの流れを引き継ぐ形で、さまざまな面で非常に活気のある1年になった。取引の面では、2025年の売買実績は、売買高が前年比10・7%増の1763・4万株、売買代金についても同18・3%増の201億1千万円となり、3年連続で前年実績を上回る結果となった。東証では日経平均株価の最高値更新が続き、証券業界全体で取引が活性化しており、政府が推進する「貯蓄から投資へ」の追い風が、着実に当取引所にも活力をもたらしていると実感している。また、取引が増加する背景として、新規上場銘柄の増加で市場の注目度が高まっていることも大きいと見ている。

―ここ2年ほどは新規上場が非常に好調だ。

犬塚 2025年の新規上場社数は本則が9社、新興企業向けのQ‐Board(以下、Qボード)が2社の計11社(前年比5社増)となった。新規上場が2けたを上回るのは1994年以来、約30年ぶりとなる。2024年12月に新設したプロ投資家向け市場、Fukuoka PRO Market(福岡プロマーケット。以下、FPM)も活況で、2025年はさらに6社が上場して、現在の上場社数は13社となっている(2026年1月末現在14社)。したがって本則、QボードにFPMを合わせた2025年の新規上場社数は17社ということになった。

―好調の背景をどのように分析しているのか。

犬塚 幾つかの要因が重なり合っていると考えている。まず、FPMが順調な滑り出しを切れたことは非常に大きかった。以前、Qボードを新設した際はなかなか第1号の上場が実現できず苦労したと聞いているが、今回は開設と同時の上場に向けて、しっかり準備や周知に取り組んだ成果が表れたものと評価している。

また、2022年の市場区分見直しを皮切りとする「東証改革」の影響も、少なからず福証での上場ニーズが高まる要因の一つになっていると見ている。特に昨年3月には、この市場区分見直しに伴う「上場維持基準の経過措置」が終了する節目だった。東証の上場維持基準の厳格化に伴い、リスク分散の視点から東証以外の取引所での重複上場を検討する動きが全国で強まっている感があり、実際に昨年新規上場した企業は県外企業が中心だ。

―最近はどのような目的での上場が多いのか。

犬塚 「九州地区での認知度向上や人材採用の強化につなげたい」という目的が最も多く、最近では「より多くの個人との接点を増やして個人投資家の増加を図り、株式の流動性を確保したい」といった目的を挙げられる企業も増えている。これは、先の東証改革に伴う上場維持基準の厳格化が影響している面も少なからずあると思う。

―東証改革の影響もあってか、最近の新規上場は重複上場が中心だ。

犬塚 減少傾向が続いていた上場社数に歯止めがかかり、現在は130社となっているが(2026年1月末現在131社)、一方で福証単独上場は29社に留まる。重複上場の場合、取引の多くがどうしても東証に流れてしまうのが実情。市場としての魅力を高め、カラーを鮮明にしていくためには、やはり単独上場を増やすことを目標に据えていかなければならない。

現在の単独上場企業の顔ぶれを見ても、第一交通産業やジョイフルなどの全国的な知名度を持つ企業や、筑邦銀行、豊和銀行、宮崎太陽銀行、南日本銀行などの地方銀行、さらには民放のRKB毎日ホールディングスなど、多様な業種の有力企業が揃っている。いずれも福証以外の市場に上場していてもおかしくない企業規模を持っているが、それぞれしっかりとした目的をもって、「福証単独」を選択している。こうした先例となるケースを呼び水に、九州で投資家を増やして事業を拡大したい企業にしっかりアプローチすることで、単独上場を増やしていきたいと考えている。