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第3世代の有機EL発光材料の開発に成功  九大・OPERA    レアメタル不使用の材料は世界初


 九州大学最先端有機光エレクトロニクス研究センター(OPERA=福岡市西区元岡、安達千波矢センター長)は12月12日、次世代型高精細ディスプレーや照明に活用が期待される第3世代有機EL(エレクトロニクス・ルミネッセンス)発光材料の開発に成功したことを明らかにし、翌13日付の英国・国際総合科学誌「Nature」のオンライン版に研究成果を掲載した。
 今回、開発に成功した第3世代有機EL発光材料は、すでに実用化されている第1世代の蛍光材料、第2世代のリン光材料がそれぞれ持っている長所を併せ持ち、低コスト・高効率の発光が可能となった世界初の有機EL材料。「Hyperfluorescence(ハイパーフルオレッセンス)」と命名し、産学官連携による実用化を目指す。今回、開発に取り組んできた「ハイパーフルオレッセンス」は内閣府の最先端研究開発支援プログラムの支援を受けてスタート。九大を中心に京大や神戸大、大阪府立大など他大学をはじめ、次世代有機ELの実用化に関心の高いジャパンディスプレーや新日鉄住金化学、東京エレクトロンなど大手企業のほか、久留米市の大電、熊本市の平田機工など県内や九州に本社を置く地元企業などが参加している。
 有機ELは電圧をかけると自ら発光する材料であることから光源が不要でディスプレー製品で使用する際、軽量・薄型の製品が作れることや、エネルギー効率が高く消費電力を抑制できることなどからスマートフォン(多機能型携帯電話)などのパネルに使用されるなど液晶に代わるディスプレー部材と位置付けられる。ただ、材料にレアメタル(希少金属)が使用され、高コストであることや、材料の基本特許を米置く企業が独占しており、高額なライセンス料が必要なことに加え、市場ではサムソン電子やLG電子など韓国勢が圧倒的なシェアを確保していることなどを背景に国内電機、ディスプレーメーカーは厳しい環境に直面している。OPERAの「ハイパーフルオレッセンス」の実用化が進めば、韓国勢に大きな遅れをとっていた日本の電機メーカーにとっては「ものづくり大国・日本」の復活に向けた起死回生のチャンスとされる。
 安達教授は「産学官の垣根を超え、“オール九州”で研究開発に取り組めたことが大きかった」として、「実用化に向けた研究開発をさらに本格化させ、世界をリードする有機ELの開発拠点を目指したい」と意気込みを話した。