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日本初、小型SAR衛星を打ち上げ  QPS研究所


17年にシリーズA九州最大、23億円調達

九州大学発のベンチャー企業で、同大学の研究成果をもとに小型人工衛星の研究開発を手掛ける㈱QPS研究所(=QPS、福岡市中央区天神5丁目、大西俊輔社長)は12月11日、同社が開発、製造した小型SAR衛星「イザナギ」1機を打ち上げた。日本で初めて「小型SAR衛星」が打ち上がり、宇宙空間へ衛星が分離されたことになる。
同社は「SAR」という合成開口レーダーを用いることで昼夜天候を問わず衛星写真を撮ることができる「SAR衛星」を開発しており、このSAR衛星によって宇宙から地球上の出来事をリアルタイム観測できるよう、将来的に36機を打ち上げるプロジェクトを実施。九州内の製造業20社を中心とし衛星開発チーム「北部九州宇宙クラスター」との共同開発で取り組んでいる。今年3月に打ち上げた1号機「イザナギ」が1年3ヵ月かけて完成し、インドの主力ロケット「PSLV」によって宇宙に打ち上げられた。
このイザナギ開発のため同社は、17年11月に㈱産業革新機構(現・㈱JNCI)や未来創成ファンドなど9社を引受先とする第三者割当増資として、ベンチャー企業が最初に出資を受ける段階「シリーズA」の資金調達としては、九州最大規模の23億5000万円を調達(のちに24億5000万円に)している。
当日は衛星打ち上げの様子を見守ろうと福岡県庁でパブリックビューイングが開かれ、約500人が参加。インドのサティシュ・ダワン宇宙センターから打ち上げられると、大歓声が湧き、衛星が宇宙空間に放出されると大きな拍手で祝った。出席した小川洋福岡県知事は「QPS研究所の関係者や九州約20社のものづくり企業の皆さんの尽力があったからこそ。ONE TEAMの努力が結実した結果。宇宙産業はすそ野が広い。県としては宇宙産業のハード、ソフト両面で振興に協力し盛り上げたい」とお祝いの言葉を語った。当日インドで打ち上げを見守った大西社長はパブリックコメントで「一緒に開発製造に携わっていただいた地場企業、チャンスをいただいた投資家の方に感謝したい。今後も地球中上のリアルタイム観測実現に向け努力したい」と語っている。

2019年12月17日発行