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喫緊の課題は新型コロナウイルス対策 福岡県の服部知事


週刊経済2021年6月15日発行

医療提供体制の強化︑地域経済の立て直しに注力

福岡県の服部誠太郎知事は6月1日、本誌インタビューに応じ、新型コロナウイルス感染症対策を最優先課題として取り組みながら、新しい成長産業の育成、大都市圏の人、企業の移転先としての受け皿づくりなどに取り組み、「九州をリードする福岡県づくりを進めていきたい」などと語った。主なやり取りは次の通り。
―4月1日の初当選を振り返って。
服部 午後8時に当選確実が伝えられた際、3つの言葉が思い浮かんだ。「感謝」、「責任」、そして「絆」という言葉。この3つの言葉を噛みしめながら県政を進めていきたい。
―就任の抱負について。
服部 福岡県を引っ張るリーダーである知事に就任したことで責任の重さを感じたことは言うまでもない。県政を進める中、県民を中心に置いた県政を推進していきたい。派手なパフォーマンスはできないが、泥臭くても、しっかり地に足をつけた県政を進めていく。とにかく愚直に頑張っていきたい。県庁一筋44年。県内各地をしっかり見ながら、県政に携わってきた。北九州市、福岡市の両政令指定都市はもとより、すべての市町村の皆さまと力を合わせ、「チーム福岡で地域の発展に貢献していきたい。目下、最優先すべき課題は新型コロナ感染症への対応だ。感染拡大の防止と医療体制のさらなる強化、その一方で地域経済の立て直しに全力で取り組んでいく。同時にポストコロナを見据えた政策を着実に推進していきたい。九州をリードする福岡県を作るべく、県議会、県民の皆さんとともに新しい時代の県政を進めていきたい。
―新型コロナ感染症対策について。
服部 就任当日に対策本部を開き、本部長として対策を進めている。北九州市の北橋健治市長、福岡市の高島宗一郎市長、久留米市の大久保勉市長ら各市町村のトップリーダーと連携を図り、県独自の対策を進めているほか、国とも協力しながら、まん延防止等重点措置、緊急事態宣言の要請を行い、感染拡大を防ぐ取り組みを進めている。緊急事態宣言による効果については、5月いっぱいの状況を見る限り、新規の陽性患者数は減少しているが、予断を許さない状況であることには変わりない。早期のリバウンドを防ぐため、感染を抑え込む必要がある。
また、医療提供体制の強化については、就任当初は809床だったコロナ患者受け入れ病床は6月1日時点で1346床まで拡大させた。大学病院をはじめとする県内70の医療機関の協力によるところが大きい。従って福岡県は入院を必要としている患者が入院できないという状況ではない。医療機関の協力に感謝申し上げたい。
―地域経済の立て直しについて。
服部 飲食を対象に県単独で時間短縮を要請し、現在でも時間短縮による営業自粛、休業を余儀なくされている店舗は少なくない。県で調査したところ、約2万5000件のうち、99%の店舗が協力していただいている。改めて感謝申し上げたい。要請に協力する企業への協力金はしっかり支給していく。また、資金繰りの面では、県の制度融資において融資枠を拡充していくほか、売り上げが減少している中小企業、小規模事業者に対する支援を強化していく。そのほか、コロナ禍で落ち込んだ消費を喚起するため、地域で利用できるプレミアム商品券の発行を前倒しし、予算規模を当初の1・5倍まで増額、プレミアム率を20%に設定した。多くの皆さんに活用していただきたい。
―新しい成長産業の支援について。
服部 ポストコロナを見据え、新しい種を蒔くことが産業政策の重要なポイントになってくる。響灘における洋上風力発電については、国の再エネ海域利用法による促進区域の指定を目指し、取り組みを進めている。脱炭素社会の実現にもつながるが、発電設備に必要な設備や部品を供給する基地も必要になってくる。優れた技術を持つ県内の中小企業が参入できるよう支援を進めていきたい。
バイオ産業については久留米市とともに「福岡バイオバレープロジェクト」を推進している。すでに200社を超える関連企業が進んでおり、4月には久留米リサーチパーク内に新たなインキュベーションセンターが完成した。また、バイオベンチャー・ボナックと共同開発している新型コロナウイルスの治療薬も実用化に向けた研究が進んでいる。
―大都市圏から地方都市への人、企業が移転する動きが見られるが、その対応策は。
服部 東京事務所に専任職員を新たに配置し、首都圏の企業や学校等担いして福岡県の魅力を発信する取り組みを強化している。併せてテレワークを推進するためのデジタル拠点の整備を市町村や民間企業と連携して取り組み「選ばれる福岡県」としての受け皿づくりを進めていきたい。