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半導体、水素、バイオなど成長産業の支援を加速 福岡県・服部誠太郎知事


週刊経済2023年12月12日発行号

8月に半導体リスキングセンター

福岡県の服部誠太郎知事は11月27日、ふくおか経済新年号インタビューに応じ、「コロナが5類に引き下げられ、普段の日常が戻り始めた一方、人々の意識や行動様式が大きく変わり始めた1年だった」と2023年を振り返り、半導体や水素、バイオ関連など県が成長産業と位置付ける分野については海外の連携も視野に入れた施策に取り組むことを強調した。主なやり取りは次の通り。
―2023年を振り返って。
服部 年初はコロナ禍ということもあり、社会全体が下を向いた雰囲気があった。それではいけないということで、とにかく前を向いて歩こう、未来を見据えて世界に向かって走り出し、福岡県の飛躍と発展のためにステップを駆け上がっていこうと申し上げていた。コロナの類型が5類に引き下げられ、社会生活がコロナ前の日常に戻り始めてきた。とはいえ、コロナの3年間は人々の意識や行動様式が大きく変化した1年だった。
―九州では半導体関連の企業進出が活発化している。
服部 TSMCの熊本進出は本県にとっても大きなチャンス。県内には優れた技術を有する半導体関連企業が約400社集積している。こうした地元に根付いた関連産業を守り、育て、伸ばしていくことは本県のみならず、日本にとっても重要なこと。その中で、課題となっているのが人材不足。この課題を解決するため、8月23日に福岡県半導体リスキングセンターを開設した。センター長は国内における半導体研究の第1人者・東京大学の黒田忠弘教授にお願いし、5年間で2万5千人の育成を目指している。
―グリーンを核にした成長産業の育成について。
服部 水素については、政府が全国8カ所に水素供給拠点を設けようと動き始めている。そのうち3カ所が大規模供給拠点となるが、北九州市響灘地区への誘致を目指すべく手を挙げた。また、従来から交流を続けている豪州・ニューサウスウェルズ州を輸入水素の調達先として検討している。同州とは水素の輸入促進についてのMOUを締結に向けて合意している。水素の普及という点ではFCV(水素自動車)の普及に向けて取り組んでいる。夏には西日本で初めて、商用車のFCトラック2台を県内の運送事業者2社に導入していただいた。来年は20台の導入に向けて準備を進めている。バスについても、九州大学伊都キャンパスと九大学研都市駅とを結ぶ路線にFCVが導入されたほか、日田彦山線BRTにも導入を決定している。
―バイオの取り組みは。
服部 特にスタートアップ企業の育成に力を入れている。スタートアップ企業には多くの資金を獲得したい、大手企業との協業にも意欲を見せる企業もある。こうしたニーズに応えるため、九経連の倉富会長、九大の石橋総長、スタートアップ企業の経営者らで訪問団を結成し、バイオ産業が盛んなボストンを訪問した。
―新年の抱負について。
服部 喫緊の課題は賃上げと物価上昇の好循環を作り上げること。すでに賃上げが中小企業に波及するために、経済界、労働界を含めて価格転嫁を進めるための取り組みを推進している。約30年にも及ぶデフレが続いている中、世界規模での賃金格差が一気に広がりつつある。物価上昇とともに賃上げも実現することで、大きな経済を作り上げることが大切になってくる。また、県民の健康や命を守るという観点では、人と動物、自然が共存できるワンヘルスの取り組みも進めていきたいし、災害から命や生活を守る取り組みにも力を入れていく必要がある。県民が未来を見据え、健康で安心して生活ができるための持続成長可能な福岡県を作っていきたい。