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「バックキャスティング」の手法用いてグループ初の長期戦略 ふくおかフィナンシャルグループ
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週刊経済2025年8月27日発行号
表紙の人インタビュー抜粋
㈱ふくおかフィナンシャルグループ(福岡市中央区大手門)の五島久社長は、本誌9月号「表紙の人」のインタビューに応え、今年度からスタートした「第8次中期経営計画」及び、初となる「長期戦略」の狙いについて語った。以下、インタビューを抜粋。
―第7次中期経営計画の評価について、最終年度である2025年3月期連結決算では、大幅に各種収益指標を伸ばした。
五島 「第7次中計の総仕上げ」と位置付けて臨んだ前期決算は、最終利益が前期比18%増の721億円となり、2年連続で過去最高を更新することができた。主な要因は、本業のもうけを表すコア業務純益が1191億円と前期比186億円増加したこと。預金・貸出金が順調に増加し、投資信託や法人関係の手数料収益も増加した。また、中計のKPIも、ROE、自己資本比率、連結コアOHRと、全て計画値をクリアできた。7次中計で掲げた「既存ビジネスモデルの変革」、つまり、「デジタル」「業務改革」「営業改革」の効果が表れ始めたものと評価している。
―福岡中央銀行との経営統合も大きなテーマだった。
五島 人財交流を積極的に進めるとともに、FFGとして集約すべき機能の統合・再編も大きく進展した。これにより、福岡中央銀行が本来の強みである中小企業金融にしっかりと取り組める体制が整い、足元ではその成果が出始めたと評価している。
―今年度から始動した8次中計について、これまでの計画とは色々と異なる部分があるそうだが、計画のポイントは。
五島 今回の中計は単なる「3カ年計画」ではないということが、従来と大きく異なる。これからFFGが何を目指し、地域にとってどのような存在でありたいのかという根本から議論し、当社の「存在意義(パーパス)」を明文化した上で、今後10年間の「長期戦略」を策定した。そして、「長期戦略」の最初の3年間を8次中計と位置付けた。これは、当グループにとって初めての試みとなる。
―長期計画を策定した狙いは。
五島 変化の激しい時代だからこそ、10年先の大きな方向性を示すことが、これからの経営には必要だと考えた。時代や状況に関わらず、私たちは何をすべきか、どこを目指すべきか。大きな方向性が明確であれば、環境変化の中でもブレずに「ありたい姿」に向かって進むことができる。そうした観点から、「長期戦略」の策定に当たっては、10年後のありたい姿から逆算して目標や戦略を策定する「バックキャスティング」の手法を採った。人口減少や環境問題、技術革新といった外部環境の変化を踏まえ、解決すべき課題を明確にした。
―新たに策定された「存在意義(パーパス)」について。
五島 約1年半にわたる議論を経て、私たちの存在意義を『一歩先を行く発想で、地域に真のゆたかさを。』と定めた。今回、価値観として再定義した『あなたのいちばんに。』をもとに、私たちが持つ先進性を生かして、地域のゆたかさに貢献したいという思いを込めている。ここでいう「真のゆたかさ」とは、経済的、物質的、そして精神的にもゆたかな状態。つまり、経済的に不安がなく、モノやサービスが充足し、心ゆたかに日々を送る。そんな幸せを誰もが実感できる地域社会の創造に、私たちのビジネスを通じて貢献したいという思いを込めている。
―長期戦略の具体的な柱は。
五島 大きく分けて3つのビジネスの柱に、それらを実現するための「アプローチの改革」と「強靭な基盤づくり」を加えた5つの基本方針で構成している。
ビジネスの柱の一つ目は、第7次中計に引き続き、「既存ビジネスの変革」です。デジタル・AIでお客さまの利便性を向上させつつ、ヒトならではのきめ細やかさを生かしてニーズに応えるサービスを提供していく。二つ目は、商業銀行を超えた新たな付加価値で九州の産業振興をリードする「新たな価値創造」。三つ目は、成長地域・分野におけるビジネスの拡大を目指す「新たな収益の獲得」。そして、そのビジネスを具体化する手段として、地域の事業者、自治体、大学など多様なパートナーの皆さまと連携するなど、「アプローチの革新」にチャレンジしていく。さらに、「強靭な基盤づくり」に向けて、FFGガバナンス体制の特徴である「シングルプラットフォーム・マルチブランド」の高度化・深化にも取り組みます。この5つの基本方針を、グループを挙げて推進し、「真にゆたかな」地域社会の創造、「FFGの企業価値向上」の好循環を目指していく。

