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虫で虫を退治する防除事業のスタートアップ設立 九州大学
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週刊経済2025年3月26日発行号
松尾講師発見の「キャメロン」活用
九州大学(福岡市西区元岡)は2月14日、害虫を駆除する新技術の防除事業を手掛けるスタートアップ「Arthron」(アルスロン。福岡市西区九大新町、荒木啓充社長)を設立したと発表した。
九州大学大学院比較社会文化研究院の昆虫科学新産業創生研究センターに勤める松尾和典講師(専門:寄生蜂の分類学・生態学)が国内で初めて確認した在来寄生蜂・キャメロンコガネコバチ(通称・キャメロン)を活用した事業で、畜産害虫サシバエの防除事業を展開する。
畜産害虫サシバエは、牛の血を吸う吸血性昆虫で、刺された牛はストレスを受けることで生産性(乳量や肉量)の低下を引き起こすほか、吸血を通じて牛の伝染病を広げる原因にもなる。さらに、近年増加している牛伝染性リンパ腫ウイルスやランピースキン病ウイルスを媒介することも明らかになっており、駆除・防除は畜産現場における深刻な問題となっていた。松尾講師が確認したサシバエの天敵寄生蜂・キャメロンはサシバエの蛹が好物で、堆肥中の蛹を探すことに長けているほか、牛や人は刺さないという特徴もあり、新たなサシバエ防除法として活用が期待されている。
新会社は、松尾講師が開発したキャメロンの同定方法と高効率に飼育する方法を活用し、サシバエの防除事業を展開。「畜産農家の生産性向上と畜産動物のアニマルウェルフェア向上に貢献していく」と目標を掲げている。