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経済の変化に柔軟に対応し着実に成長 ワールドホールディングス伊井田栄吉会長兼社長に聞く
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週刊経済2024年12月18日発行号
―今年を振り返って。
伊井田 あっという間の1年。元日早々に起きた能登半島地震をはじめ、昨年は様々な逆境からのスタートだったが、的確に対応策を講じ、業績的には大きな影響を受けずに済んだ。12月決算は大体予定通りの着地ができそう。
―事業別の状況は。
伊井田 人材教育で製造系のプロダクツHRでは、地震の影響のほか、自動車関係の稼働停止等もあったが、幅広い業種をカバーする強みを生かし、変化に柔軟に対応できた。半導体関係も回復しつつあり、売上高、利益ともに前期を上回る見込みだ。また新たに最先端の半導体製造装置を備えた実践的トレーニング施設「熊本テクニカルセンター」が完成し、年間500人のエンジニアを育成する計画で、半導体関連の人材需要に対応していく。
―サービスHRでは昨年、ヤマト・スタッフ・サプライ㈱をグループ化した。
伊井田 ヤマトホールディングスさんと業務提携し、同社をグループに迎え入れたほか、様々な取り組みを模索している。中でも物流分野で培ったレイバーマネジメントのノウハウを生かし、コストダウンを可能にする「HRサポート」は既に一定の効果も出ている。さらに物流では9月に、小郡市の物流施設約4万㎡を賃貸して「EFセンター」を開設。初の自社物流拠点で、稼働はとても順調に推移している。
―不動産は。
伊井田 不動産価格の高止まりが続きリスクの高い状況が続いている。物件の賃貸収入等で収益を確保し、売買は無理のない範囲で慎重に動くことで業績の安定化を図っている。
―情報通信事業や農業公園は。
伊井田 情報通信は、携帯電話ショップ中心から、中小企業などを対象にコスト削減を提案するソリューション事業に重心を移し、利益が出るようになっている。農業公園は非常に順調で、入園者数も順調に増えているほか、昨年は新たに5カ所の運営を受託し、現在22カ所になっている。
―新年度に向けては。
伊井田 政治によって経済が大きな影響を受ける時代になるだろう。アメリカではトランプ氏が大統領に復帰し、貿易摩擦、関税引き上げで日本の自動車産業など輸出産業は厳しくなるだろうとの予測もある。それも想定しながら、我々は自分たちの既存事業の強みを一層磨いていく。まったく新しいことにチャレンジするより、既に持っているインフラを活用して新事業を起こしていくべきだ思う。
―課題としては。
伊井田 やはり人材。少子化の中で、国は外国人材の受け入れを推進しているが、それより私は高齢者や女性、特に子育て女性の活躍の場を創出することが重要だと考えている。日本の高齢者は労働者として世界のトップランナーだった人たち。その定年を延ばす、あるいは再就職でも働きやすい職場環境の整備を支援するような政策が必要だし、女性が子どもを育てながら存分に活躍できる環境を作っていくことが重要だと思う。