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ふくおか経済EX 2020

(株)太平環境科学センター


自動化による生産性向上を新事業開発の資源に

(写真上)現在は約半数を女性社員が占める。分析業務の自動化が生産性の高い職場環境を作り、女性活躍も推進できるようになった
(下)2019年12月に実用化した自動ろ過装置。これまでのような安全柵が必要なく、人のそばで協働作業ができる「協調ROBOT」を導入した

業界に先駆けて導入した分析業務の自動化は、顧客への迅速、かつ正確な検査結果の提供に加え、生産性アップによる職場環境の改善にも大きな効果をもたらした。安定的な収益基盤のもと、産学連携で水上ドローンも開発。今後も新たな事業に果敢に挑み、完全自動ラボの実現を目指す。

産学連携でGPS搭載の水上ドローン開発

2019年秋、同社が研究開発費200万円を負担し、海洋ロボットの研究・開発で実績のある長崎大学工学部の山本郁夫教授の研究室と共同で水質調査用の水上航行ロボットを開発した。
ロボット名は「UKIBOTⅡ(ウキボット2)」。湖沼や海洋での水質調査については、表層・中層・底層の採水が必要だが、底層は底面の形状が複雑な上、水面の風や潮回りの影響も受けるため、定点での調査は困難を伴う。そこでGPSを搭載した浮き輪型の水上ドローンを遠隔操作し、カメラや超音波などの各種センサーを駆使し地底の成層構造を立体的に測定し正確な底面を割り出すことで、常に適切な位置から調査用サンプルを採水することを目指す。実現すれば調査時間が短く済み、人が入水する必要もないため安全に調査することが可能だ。
試作機は全幅60cm、高さ40㎝、重量約10kg。底面に4つのスクリューを搭載し、全方向に毎秒1mで移動することができる。今後は直径約1.5mまで大型化、採水可能な水深も試作機の3倍となる30mまで拡大させ、実用化に向けた水質調査のさらなる安定化を目指す。
「一度に数カ所のサンプルが採取でき合理的。長崎大学との協力体制のもと、さらなる検証を進めたい」と意気込む坂本社長。高い水質管理が求められる養殖施設など幅広い分野での活用も見込まれており、今後の動向に注目が集まる。

自動化がもたらした働き方改革

分析業界内でいち早く「自動化」に舵を切り、業界内で機先を制してきた同社。これまで「分注装置」、「細菌検査装置」、「BOD(生物化学的酸素要求量)分析装置」、「MPN検査装置」、そして2019年12月には「ろ過装置」も自動化するなど、2011年から次々と分析工程のロボット化を進め、分析の高速化と精度の安定化を実現している。
それは一方で、生産性向上への具体策として、職場環境にも大きな変化をもたらした。仕事を効率化し、必要な仕事と不必要な仕事の取捨選択を明確化できたことで、かつて長時間労働が当たり前だった労働環境は劇的に改善。近年では週2日のノー残業デーや最大9連休となるリフレッシュ休暇制度が定着し、有給取得率もアップしている。
また17年には女性の活躍を推進する企業を認定する「えるぼし認定」、18年には分析事業者でありながら、高品質なサービスを提供する企業として認定される「おもてなし規格認証(金認証)」も取得。働き方改革を進めつつ、全従業員のサービス、接遇への意識徹底も図ることができた。
4月からは新規事業として、震災などで倒壊した建物からの飛散が問題となっているアスベストの調査・分析業務をスタートする。「自動化で収益率も上がり、安定的に業績が伸ばせているからこそ、新しい取り組みもチャレンジできる」と胸を張る坂本社長。「ロボットは人を助ける」。この信念のもと、AIやRPA、クラウド分析システム、イントラネットなどを駆使した「完全無人ラボ」の実現に向け、これからも飽くなき挑戦は続く。

長崎大学と共同開発した水質調査用の水上ドローン
研究チームのメンバーと坂本雅俊社長(右端)、田村和敏計量管理者(左から2番目)

 

採用情報
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応募資格/
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担  当/(管理部)龍

(ふくおか経済EX2020年)