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ふくおか経済EX 2020

(株)アキラ水産


持株会社体制に移行、柔軟性かつシナジーで“攻め”に

鮮魚仲卸地場トップの㈱アキラ水産が1月からグループ体制を新しくした。㈱アキラホールディングスを持株会社とし、傘下にグループ各社を置く。卸売市場法改正で業界環境が激変する中、グループ間のシナジー効果の最大化が狙い。業界に先んじている安心・安全対策と合わせて、新体制で“攻め”に出る。

鮮魚仲卸地場トップの㈱アキラ水産。そのルーツは100年以上前にさかのぼる。博多の台所として知られる柳橋連合市場の前身「明市場」がそうだ。
安部社長の祖父・栄次郎氏が創業し、連日、多くの客でごった返していた。仕入れた魚をほぼ原価で売ったため、その安さから客は大喜び。店内には魚を入れていた空の木箱だけが瞬く間に積みあがっていったことから、“箱儲け”(カラ箱の買取賃分だけの儲け)と言われ、以後、その薄利多売の姿勢は、同社のDNAである「顧客第一主義」として根付いていく。
戦中、戦後を経ても「顧客第一主義」は受け継がれ、安部社長がトップに立ってからは時代のニーズに合わせて業容も拡大していった。1960年代に入り、安部社長は「すぐにでもスーパーマーケットの世の中がやってくる」といち早く察知。即座に量販店向けの品ぞろえに変更し、売り上げを拡大させていった。
2000年代になると、取引先小売店の加工作業の軽減のために、魚をさばいておろす1次加工や2次加工、パッキングまで施す3次加工までを自社で手掛けるようになった。そのノウハウをもって08年頃からはグループ会社でオリジナル加工品の開発にも着手。明太子の「あきらめんたい」や「アキラの鯛茶」が商品化され、今もって人気のロングセラーとなっている。最近ではこれらに「銀だらみりん」も加わった。

アキラ水産のルーツ「明市場」。来店客でごった返しているのがわかる。中央左に立っているのは創業者で安部社長の祖父・栄次郎氏

1月にアキラホールディングス設立

そのアキラ水産のグループ体制が今年から新しくなった。
1月に、グループの持株会社として「㈱アキラホールディングス」を設立。その傘下に、仲卸の㈱アキラ水産、㈱コウトク水産、㈱安部水産、塩干物販売の㈱一心、仲卸・加工販売の㈱アキラ・トータルプランニング、仲卸・冷凍物販売の㈱四季海 の6社をそれぞれ置いている。
新体制構築の背景には、6月から施行される改正卸売市場法がある。いわゆる異業種からの参入障壁を下げるもので、業界環境が一気に変わりかねない。
その中で同社グループは、ホールディングスカンパニーを立ち上げ、4月1日付で、安部社長がホールディングスカンパニーのCEOならびにアキラ水産の会長に就任。アキラ水産の社長には上田浩祐副社長が昇格する。
業界環境が厳しくなる中でも、今後ニーズがあれば、ホールディングスカンパニー傘下に新たなグループ会社を設立し、さらに業容を拡大させることも柔軟に検討していく。

卸売市場のHACCP式衛生管理にも対応

時代のニーズに合わせるという意味では、同社グループの安心・安全対策も業界の中で先んじている。
2006年に鮮魚仲卸として全国で初めてISO9001を認証取得。このほか、グループ各社で卸売市場のHACCP対応の考え方を取り入れた衛生管理にも取り組んでいる。また、アキラ・トータルプランニングでは、非認証水産物の混入防止を確保するCoC認証も取得するなどの徹底ぶりだ。
市民の食卓に欠かせない美味しい魚を全国へ—。これは、安部会長の長く変わらない思い。フレキシブルなグループ新体制と強固な安心・安全策で、これからも“攻め”に出る。

安部 泰宏 会長
あべ・やすひろ/福岡市中央区出身。1939年3月29日生まれの81歳。福岡大学付属大濠高校卒。趣味はゴルフ。全国水産物卸組合連合会副会長。九州地区水産物卸組合連合会会長。福岡市鮮魚仲卸協同組合理事長。福岡魚食普及推進協議会会長。地場経済界に広く交流を持ち、2004年7月福岡城西ロータリークラブ会長。05年4月藍綬褒章、11年6月旭日双光章。福岡商工会議所では議員(卸売商業部会長)など経て14年11月から副会頭(現在6年目)

 

(ふくおか経済EX2020年)