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ふくおか経済EX 2018

(株)アキラ水産


市場内加工場を大幅リニューアル、MSC/CoC認証取得へ

鮮魚仲卸地場大手の㈱アキラ水産が昨春、長浜魚市場内の専用加工場を大幅リニューアルし、この春にも同工場でMSC/CoC認証取得を見込んでいる。国際レベルの品質管理を実現させたのは、顧客ニーズに応えたもの。同社にはこういった「顧客目線」が創業時からDNAとして受け継がれている。

昨今の異常気象や漁師の後継者不足による漁獲高減少がある中、鮮魚仲卸地場大手の㈱アキラ水産は、グループ6社体制を築きあげ、卸から加工まで業容を拡大している。そこには創業以来受け継がれてきたDNAである「顧客目線」が常にある―。

受け継がれる「顧客目線」

同社のルーツは博多の台所として知られる柳橋連合市場の前身である「明市場」。安部社長の祖父・栄次郎氏と伯父の明氏、父の篤助氏の3人が創業し、当初から「箱儲け(魚を入れていた箱の分だけの儲け)」として市民を相手に薄利多売を実践。「顧客目線」はここから始まった。
1960年に仲卸業に転向してからしばらくすると、「スーパーの時代がやってくる」と安部社長が先見の明を発揮し、いち早く量販店向けの品揃えに変更。2000年代に入ってからは取引先小売店の加工作業軽減のために鮮魚市場内に専用工場を設け、魚をさばいておろす1次加工や2次加工、パッキング等の3次加工までを手掛けるようになった。

同社の通販サイト「アキラ市場」で販売する「天然真鯛の鯛茶漬け」。「アキラ市場」ではこのほか、ギフトセットや明太子、一夜干しセットも購入できる(https://www.akirasuisan.co.jp/shop/)

長浜加工場、MSC/CoC認証取得へ

2006年には鮮魚仲卸として全国で初めてISO9001認証を取得。16年には古賀市の福岡食品加工団地内にHACCP(ハサップ・国際的な衛生管理手法)にも対応した「アキラ水産古賀工場」を開設した。
これらに加え、昨春には市場内専用工場を大幅リニューアル。冷蔵設備を一新し超低温冷凍庫を導入。また、この春をめどに同工場において、MSC認証(海洋自然環境や水産資源を守って獲られた水産物に与えられる認証)を取得した水産物を適切に管理するためのCoC認証(加工流通過程の管理)の取得を目指すという。これにより取扱商品の幅が今よりももっと広くなる。
それぞれの時代における顧客ニーズへの対応が、今や国際レベルの品質管理をも実現。食の安心・安全という究極の「顧客目線」を形にした。

中学校給食へ、ぶり切身4万食提供

安部社長が本業の傍ら力を入れるのが「魚食普及」。その一環で、自身が会長を務める福岡魚食普及推進協議会は、毎月第2土曜日に長浜魚市場を市民に開放する「市民感謝デー」を開催。08年のスタートから100回以上を数えるが、毎回数千人がお目当ての品々を買い求め、市民の間ですっかりお馴染みのイベントとなった。
その「魚食普及」活動はなにも市場内に止まらない。今年1月、福岡市立の中学校と特別支援学校71校の学校給食に、初めて福岡・玄界灘産のぶりの切身が提供された。生徒らに地元食文化を学んでもらおうという取り組みで、アキラ水産も協力。古賀工場から4万人分のぶりの切身を提供した。
福岡の食には欠かせない新鮮な魚。「地元のおいしい魚をもっと知ってもらいたい」。安部社長は思いを強くする。

安部 泰宏 社長
あべ・やすひろ/福岡市中央区出身。1939年3月29日生まれの79歳。福岡大学付属大濠高校卒。趣味はゴルフ。全国水産物卸組合連合会副会長。九州地区水産物卸組合連合会会長。福岡市鮮魚仲卸協同組合理事長。福岡魚食普及推進協議会会長。地場経済界に広く交流を持ち、04年7月福岡城西ロータリークラブ会長。05年4月に藍綬褒章、11年6月に旭日双光章を受章した。福岡商工会議所では議員(卸売商業部会長)などを経て、14年11月から副会頭(現2期目)

 

【DATA】
所在地/〒810-0072 福岡市中央区長浜3-11-3-711
TEL/092-711-6601
FAX/092-715-3293
創業/1918(大正7)年
設立/1947年4月
資本金/4,850万円
事業内容/(福岡市中央卸売市場)鮮魚仲卸全般
年商/103億円(グループ)
従業員/81人(グループ)
関連会社/㈱コウトク水産、㈱一心、㈱安部水産、㈱四季海、㈱アキラ・トータルプランニング
URL/https://www.akirasuisan.co.jp

(ふくおか経済EX2018年)