FEATURE

ふくおか経済EX 2020

(株)アダル


はたらく家具をつくる

企画から製造販売までの一貫体制を築き、提案力、技術力、生産力に磨きをかけ、その空間に最適なインテリア家具を世に送り出している。老舗企業ではあるが、近年は若い人材を積極登用した社内改革も進め、EC事業に着手するなど新たなマーケットを切り拓き、アジア、そして世界に目を向けた成長戦略を描く。

今春、総合工場を新築移転

福岡都市高速道路沿いに表れる赤く大きな球体。周辺シンボルにもなっているアダル本社ショールームには自社開発のインテリア家具がずらりと並ぶ。
小さな個人商店として椅子の製造から始まった同社だが、インテリア家具のラインナップは多種多様。営業、プランニング、製造機能のすべてを集結し、トータルで顧客の要望に対応する。「単にメーカーとして製品をつくるのではなく、あらゆる角度から目の前のニーズに応えていく」と武野龍社長。近年のホテルや商業施設の建設ラッシュ、オフィス進出による需要増に対応するため、このほど中国上海の2つの製造拠点を集約し、浙江省に新工場を建設するとともに、国内では、糟屋郡宇美町井野天園に総合工場として新築移転。新工場は、これまで同町早見工業団地と大野城市にあった2拠点の生産と物流機能を集約、敷地面積は現在の工場の2倍の広さとし、最新鋭機器の導入で、生産効率は格段にアップし、盤石な体制を構築する。

EC着手で販売チャネル拡大

Eコマース市場の拡大、事業進展に合わせ、インフラ整備も必要となり、このほどEC事業に着手。昨年7月、単独で「ADAL ONLINE SHOP」をオープンした。掲載商品数は1000点以上。BtoBプロ会員向けサイトとして運用し、ユーザーは会員登録すると、保証年数や注文数量に応じた独自のディスカウントができ、メーカー直販サイトならではの安心と信頼性が受けられるというもの。同社は営業でカバーできない地方エリアや、代理店マーケットの拡販、企業間連携も視野に入れながら販売チャネルを増やしている。
さらに、ブランディング施策の一環として、一般ユーザーを対象としたSNS活用の新企画「#アダルを探せ」も展開。「どんな施設にも存在する、普段は当たり前すぎて意識しない家具に目を向けてもらえたら」と、家具業界全体を盛り上げ、空間づくりの視点で紹介する定期刊行物「はたらく家具」も発信中だ。

(写真左)ショールーム機能を備えたアダル本社
(右)5月稼働開始の新工場

若い人材が活躍

新たな策を投じ、65年以上の歴史をもつADALの持続的な成長を支えているのが若きスタッフの存在でもある。高品質家具の製造において、一貫体制を構築する同社では、技術系職人と企画、デザイナー、営業の各部署の連携を図りながら、まだこの世にない家具や空間をゼロから生み出している。「人材の省力化、デジタル化が進む中でAIでは補えないアイデアや企画力、対応力がますます求められる」とし、定期的な新卒採用も積極的に実施。早い段階から現場経験を積み個人のスキルアップを後押ししている。現在進行中の海外販路開拓プロジェクトで、日本の伝統素材である「い草」の魅力を家具に生かした取り組みにも、若い人材を登用し、イタリアミラノで開催される家具の世界的な展示会にも出展。革新的な家具デザイン表現にも挑戦中だ。「長い歴史の中で培った技術力をメイドインジャパンの技術として世界に向けて発信する家具のインフラメーカーのような存在を目指したい」と、アダルの家具づくり精神を次世代へと継ぎ、さらなる歴史を歩んでいく姿勢だ。

武野 龍 社長
たけの・りゅう/福岡市出身。1978年福岡生まれ。2003年アダル入社。製造から営業までさまざまな職務を経験。夢はアダル社員の子どもたちがアダルに入社すること。趣味はバスケットボール

 

採用情報
募集職種/営業職 製造職 企画職
応募資格/大卒 短大卒 専門卒 高卒
採用実績/2020年度18人
年間休日/122日 製造職は100日
問合せ先/TEL.092-504-3932
担  当/総務・人事課 本村

(ふくおか経済EX2020年)