FEATURE

ふくおか経済EX 2010

日本政策金融公庫 こくきん創業支援センター福岡


目指すは小企業の「金融・経営支援サービスのハブ機関」

創業支援のパイオニア

「創業は地域経済の活性化や多様な雇用を創出する、経済発展の源」。08年10月、国民生活金融公庫、中小企業金融公庫、農林漁業金融公庫、国際協力銀行の4機関が統合し、日本政策金融公庫(以下「日本公庫」)が誕生した。「こくきん」の通称で親しまれた国民生活金融公庫は、現在、日本公庫の国民生活事業として、民間金融機関の補完と小企業の育成を使命とし、創業支援においてもその力を発揮している。創業企業への融資は全国で年間約2万企業にのぼり、ソニーや京セラなどの名立たる企業も設立当初は公庫からの融資を受け、東証1部上場企業へと育っていった「卒業生」だ。
98年に廃業率が開業率を上回り日本経済の活力低下が懸念されてから、創業支援は国の重大な施策と位置づけられ、2001年、政府は「開業倍増プログラム」を発表、本格的なベンチャー支援に乗り出した。このような背景から公庫では05年、全国4カ所(札幌、東京、大阪、福岡)に「こくきん創業支援センター」を設置した。現在、全国17カ所(九州は福岡と熊本)に拠点を増やし、創業や第二創業の支援をしている。「第二創業」とは、既存企業が経営の多角化や事業転換を図り新規事業に着手すること。この急激な経済状況の変化を新たなビジネスモデルで乗り切ろうという企業を資金面で支援する。博多駅前の日本公庫福岡支店内にある「こくきん創業支援センター福岡」(以下「センター福岡」)では、創業・第二創業支援のキーステーションとして、各種融資制度の案内や経営相談の対応、他の創業支援機関との連携体制の構築、地元マスコミを通じた広報活動などに取り組んでいる。

09年12月、九州大学で開催された「日本の政策金融について」の講演会

地域産業の情報発信局情報・マッチングサービスなど提供

09年10月、センター福岡は、福岡市総合図書館で中小企業を対象としたセミナー、交流会を開催した。これは同図書館と独立行政法人中小企業基盤整備機構九州支部との共催で行ったもので、参加者は100人を超えた。近年、このようなセミナーや講演会、交流会を年3回ペースで行っている。融資の相談以外にも、その豊富な実績とノウハウを生かし、経営支援セミナーやビジネスマッチングを目的とした交流会の開催のほか、創業企業の動向調査や事例紹介の広報活動など、さまざまな側面から創業・第二創業の経営支援を手掛けている。予約制の無料創業相談会では、専任の担当者が、事業計画書の作成段階からのアドバイスを行う。また地域の商工団体等と連携し、相談内容に応じ各機関への紹介、取次ぎを行っている。中小企業基盤整備機構や中小企業診断協会、インキュベーション施設とのネットワークを活用し、各機関の施策やイベント情報を積極的に案内しており、地域産業の「情報発信局」としての役割も担っている。

産学「金」連携大学シーズ、県プロジェクト支援

日本公庫は大学や専門学校で、ビジネスプランの作成や中小企業金融の実務などの金融講座を積極的に開催している。これまでに、九州大学、福岡大学、北九州市立大学、九州産業大学、福岡美容専門学校などで実施しており、「創業に関わらず、学生が自身の将来を考えるきっかけになれば」という想いが込められている。実際、福岡には大学を母体としたベンチャー企業が多い。その累計数は、全国でも4位で、大学別では九州大学(8位)、九州工業大学(10位)が上位に名を連ねている。中でも九州大学知的財産本部が中心となってベンチャー企業を支援する「綾水会」とセンター福岡は、05年から連携しており、「綾水会」に参加するベンチャー企業へ09年12月までに計27件、約2億円の融資を行っている。
こうした背景から、福岡県内の支店では、知的財産権を担保とした融資や新規性のある技術・ノウハウを生かして新規事業を立ち上げた企業向けの「挑戦支援融資制度(劣後ローン)」を全国に先駆けて実行している。また、福岡県が進めているグローバル産学官連携拠点事業(「新成長産業クラスター連携融合拠点」構想)についても、県内4つの中核機関と連携し、システムLSIやバイオテクノロジーなど次世代を担う先端分野の事業計画の実用化に向けた研究開発資金や大学発ベンチャーの技術シーズを事業化するための資金など、県の推進プロジェクトへの資金面からの支援に注力している。
センター福岡は「小企業は経営に役立つ情報を入手しにくく、無料で利用できる公的機関や施策を知らない企業が多い。公庫に行けば情報がある、融資以外にも相談できる身近な金融機関と感じてもらえれば」と、小企業の「金融・経営支援サービスのハブ機関」を目指している。これはセンター福岡に限らず、日本政策金融公庫全体の到達点でもある。統合のシナジー効果を高め、地域企業を支える「ハブ機関」へと基盤を固める日本公庫に社会の期待は一層高まっていく。

 

企業DATA
所在地 〒812-8689 福岡市博多区博多駅前3-21-12 日本政策金融公庫 福岡支店国民生活事業内
TEL 092-411-9111
FAX 092-475-5629
事業内容 創業支援、地域活性化支援、情報提供など各種創業支援サービス
URL http://www.k.jfc.go.jp

(ふくおか経済EX2010年)