FEATURE

ふくおか経済EX 2011

新栄住宅㈱


経営革新進め、新しいマンションづくりも提唱

(写真)昨秋分譲を始めた「アンピール筑紫野Ⅱ」の完成予想図(左)。伊都土地区画整理地区に建設中の「アンピール伊都」の完成予想図(右)

総合不動産業めざし賃貸事業が第二の柱に

創業40周年を機にデベロッパー専業から総合不動産業に転換した新栄住宅㈱。賃貸物件では09年12月に熊本市中心街の店舗付立体駐車場「ライオンパーキング」を取得。さらに昨年6月にイオン大野城SC(旧大野城サティ)の大型立体駐車場、同8月に熊本市のワンルームマンション「アンピール神水」(旧峯雲神水館)を取得し、安定した収益基盤を着実に積み上げた。年間の賃料収入は約6億円に増え、第2の柱として成長を続けている。
同社では、今後もこうした物件の買い付けを積極的に進め、収益事業として展開する。同時に新しい経営形態に合わせて組織のスリム化を図り経営体質も強化。売上規模こそ縮小したが、むしろ経営基盤は安定感を増している。さらに、子会社の新栄総合管理㈱とともに管理物件を増やして安定収入の確保を図り、大規模改修やリフォームなど新たな事業にも力を入れる。経営革新はシナリオ通りに進んでいるといえよう。

住む人が主役の新しい「アンピール」

一方、しばらく新規物件の供給を控えていたマンション開発でも、満を持して動き出した。昨秋分譲を始めた「アンピール筑紫野Ⅱ」は11階建てで、総戸数80戸。「イオンモール筑紫野」と「ゆめタウン筑紫野」の大型SCに挟まれた立地で、JRと西鉄の両駅にも徒歩で行ける通勤・通学に恵まれた利便性を持つ。
その立地条件に加え、開発手法も注目される。すなわち開発前に徹底した市場調査を実施し、子育て世代の生の声を住まいづくりに反映。例えば、開放感のあるリビングに設置されたコミュニケーションコーナーやフリールームはこうした生の声を反映したもの。作り手の論理だけではなく、住む人を主役に置いた新しいマンションづくりを進めている。
ミセスの視点で極めた先進性能と洗練されたデザインで、ステータスを確立した「アンピール」ブランド。そこに子育て世代の生の声を加え、新しい「アンピール」が誕生した。

九州初の「頭のよい子が育つ家」の認定マンション

さらに、福岡市西区伊都土地区画整理事業地内の「アンピール伊都」でも新しい試みを採用した。こちらは「頭のよい子が育つ家」の著者・四十万(しじま)靖氏の監修で、昨年7月に着工。9階建てで、総戸数48戸。現地にモデルルームを設置して3月26日から一般分譲も始めたが、すでに予約段階から話題を集めていた。親子のコミュニケーションを重視した間取りには随所に工夫が見られ、洋室に行くには必ずリビングを通る設計や和室に土俵畳を設けたユニークな仕掛けもある。
同氏は人気私立中学合格者の学習環境を調査。今必要な子どもたちの学習環境をテーマに各地でセミナーを開き、テレビ番組にも出演して話題を集めた。同氏が社長を務めるスペース・オブ・ファイブ㈱は全国でライセンス契約を結び、同氏が勧める「住まい方」を提案している。ライセンス契約を結んで建設するマンションは、九州で初めてという。
そのコンセプトだけでなく、「イオン」に加えて徒歩で行ける距離に「ルミエール今宿店」が出店し生活の利便性が増した。新しい街づくりが進むエリアだけに、今後が楽しみな物件になりそうだ。

オリジナルキャラクターも誕生

新しいマンションづくりが進む中、初のオリジナルキャラクターも誕生した。制作したPansonWorks(パンソンワークス)は、オリジナルキャラクターのロビン君や「ルパン三世」「ゲゲゲの鬼太郎」などとのコラボレーションで人気のクリエーター。若い子育て世代の4人家族をイメージした「アンピールファミリー」は、従来のデベロッパーの固いイメージを一新し、親しみやすさを演出する。
オリジナルキャラクターの誕生は、子育て世代の生の声を反映し、住む人が主役に置いた新しい「アンピール」の姿を表現している。

今年3月に誕生したオリジナルキャラクター

熊本で注目のプロジェクト始動

新規供給を再開した同社だが、県外でも注目のプロジェクトが動き出す。熊本市千葉城町に11階建てマンションを開発するもので、場所は熊本城北側の県道1号沿い、藤園中学校西側の熊本厚生年金会館跡地。中心地の上通・下通地区には徒歩で行ける距離で、幼稚園から高校まで揃う文教地区。緑豊かな環境で眺望にも恵まれ、マンションとしてこれ以上は望めない立地条件を持つ。
3年前から用地を取得して計画を進めていたが、近隣に生鮮スーパーがない点がアンケートの生の声でも挙がっていた。しかし、その懸案もイオン系の生鮮スーパー・マックスバリューの出店が決まり、注目のプロジェクトが一気に動き出した。今年7月に着工し、10月には販売を開始する計画。第一期分譲戸数は90戸で、来年8月の完成を目指す。
さらに長崎県大村市の中心市街地の再開発事業でもマンション開発が浮上。こちらは再開発組合の要請を受けて動き出すもので、中心市街地の活性化に期待がかかる。福岡でも宗像市の東郷地区で開発に乗り出す。新しいビジネスモデルを構築し、新しい形の「アンピール」が各地で広がりを見せている。

安心と信頼を礎に新たな一歩

バブル崩壊の教訓を生かしてコツコツと地道に自己資本を積み上げ、ミニバブルと呼ばれた地価の高騰にも目を向けることはなく、愚直なほどに堅実経営を貫き続けた同社。今では地元業界でトップクラスの財務内容を誇り、地元福岡で安心と信頼を確立した。総合不動産業を目指した経営革新も、40年間で培った安心と信頼の上に成り立っている。
もちろん、路線転換はしてもマンション開発を軸にした展開に変わりはない。木庭社長は、そのマンション開発について次のように語る。「時代とともに変わるお客様のご要望に応え、お客様を満足させる住宅の提供が必要」。09年9月現在で139棟、8,824戸を供給し、信頼と安心のブランドを確立したが、原点を見つめ直して新たな一歩を踏み出した。

木庭 兌 社長
こば・とおる/1935年11月9日生まれの75歳。福岡県山門郡瀬高町出身、県立山門高校卒。東峰住宅産業から独立し、70年新栄住宅㈲を設立。80年から「アンピールマンション」の販売を開始。02年9月に早良区城西から現在地に本社を移転。県内供給実績トップを誇る企業に成長させた

 

企業DATA
所在地 〒810-0041 福岡市中央区大名2-11-25
TEL 092-762-7711
FAX 092-762-7710
創業 1970年2月
設立 1970年2月
資本金 4億8,000万円
事業内容 マンション分譲・販売、不動産・住宅の流通・仲介、ビル事業・賃貸管理
年商 41億4,300万円(10年9月期)
代表者 木庭兌
従業員 35人
出先 (賃貸事業物件)福岡市中央区、博多区、南区、北九州市、筑紫野市、熊本市
関連会社 ㈱新栄地建、新栄総合管理㈱
URL http://www.empire-mansion.com

(ふくおか経済EX2011年)