FEATURE

ふくおか経済EX 2020

㈲久松


「毎日がハレの日」新たな目標掲げ事業拡大

松田 健吾 社長
まつだ・けんご/福岡市出身。1979年10月18日生まれの40歳。福岡工業大学付属高校卒。18歳の頃から家業の仕出し屋「久松」で働き、24歳でおせちのネット販売に参入。以降、販売戦略、製造設計、経営戦略を立てる同社の屋台骨。2019年5月社長就任。趣味は飲食店巡り

新社長に就任した松田健吾社長のもと、「毎日がハレの日」を目指して商品づくりに取り組む久松。自社開発の受注管理システムが本格的に稼働し、作業効率の3割削減を目指すほか、外部向けにシステムのパッケージ販売も計画。主力のおせちセットに続く新たな事業の柱として、米の通販も開始した。

社長就任後、季節商品を刷新

昨年5月、経営の若返りと事業の飛躍を図るため、母の久美子会長の後を継ぎ就任した松田健吾社長。「EC業界を取り巻く経営環境は目まぐるしく変化しているが、遠くから見ても『この会社は伸びている』と映るように、自力をつけていきたい」と意気込む。
就任後、松田社長は主力のおせちセットを除く、既存の「母の日」「父の日」「敬老の日」向け商品の刷新に着手した。現在各祝日向けに2~3人前、4~6人前の2種類のオードブルセットをそれぞれ取り揃えていたが、計17アイテム程度に増やし、販促を強化。第一弾となる母の日に向けて社内の専属プロジェクトチームが商品開発を進めており、将来的にお歳暮やお中元などフォーマルギフトにも商品を拡充していく。

同社主力商品のおせちセット。写真は一番人気の「博多」(税込み15,800円)

受注管理システムの外部提供視野に

インターネット上でおせちを販売する事業に参入して15年、年々販売数を伸ばし、年商20億円を突破した同社では現在、事業戦略の見直しを図っている。その一つが、新たな受注管理システムの導入だ。同社では採用コストを抑えるため、現状の少人数のまま売り上げを伸ばす方針に変更。今春からシステムを本格稼働させ、導入後は既存業務の3割削減を目指す。削減できた人員やリソースは新設した商品開発と販売促進の部署に集中させていく。
また、開発に10年の歳月をかけた同システムを外部向けにパッケージ化して販売する準備も進めており、「食品メーカーとしてEC事業に進出、販売を伸ばしてきた当社のノウハウが詰まっている。今後ECに参入する企業や、伸び悩んでいる企業に提供するだけでなく、企画・デザイン・管理を請け負って、月商1000万円を達成するまで企業を支援する、ECコンサルティング的な事業も可能性としては考えている」と松田社長は意欲を示す。

米の通販を第二の柱に

これまでおせちセットの販売が主力だった同社だが、楽天市場、ヤフーなどのECモール内で運営する同社店舗「博多久松」や自社ホームページで新たにブランド米などの販売を開始した。主力のおせち販売と並ぶ、第二の柱に成長させる考えで、取り扱うのは北海道産の「ゆめぴりか」や「ななつぼし」など価格帯が高いブランド米と、同米を組み合わせたブレンド米の7種類程度。販売開始当初は月間20トン、約800万円の月商を目指す。
「おせちと違い、米は日本人の食生活にもっとも根付いた商品。購入頻度も高い。米の販売を通して、毎月の売り上げを平準化し、新規獲得した顧客に対して年末のおせち販売を案内するなど商品同士のシナジー効果を高めていきたい」と、新たな取り組みについて説明する松田社長。「これまで『ハレの日』の美味しさを提供する企業を目指していたが、お客様に『毎日がハレの日』を感じてもらえるよう、精進していきたい」と新たな目標に向かって、歩みを進める。

同社社員と松田健吾社長(後列中央)。現在は人材育成に注力するため新卒採用を停止しているが、数年後をめどに再開する予定

 

(ふくおか経済EX2020年)