FEATURE

ふくおか経済EX 2012

㈱九電工


人、環境、技術の最適な調和を目指した人財育成の場
「九電工アカデミー」が完成

総合設備業としての技術習得と企業人としての人格形成。環境負荷低減を図るためのさまざまなエコ対応設備。新研修センター「九電工アカデミー」は、次代を支える人財育成とともに環境関連事業に対する同社の取り組みを形として見せる役割も担う。

(写真左)このほど完成した「九電工アカデミー」
(右上)「庵」イメージ。10月完成予定
(右下)「安全伝承館」の俯瞰イメージ

“人は財”の眼目となる拠点に

佐賀県鳥栖市の研究開発センター隣接地に建設していた新たな研修施設「九電工アカデミー」が完成した。橋田紘一社長は「私の、社長として最大のテーマである『人は財(たから)』の眼目となる拠点」と評する。「『人』『環境』『技術』の三つの柱に、その最適な調和を目指しての人財育成の場とする。」を基本コンセプトに、光・風・空気といった自然の力を活用した環境対応型施設でもある。
太陽光、太陽熱、地熱など自然エネルギーを有効活用するほか、輻射冷暖房やLED照明による省電力化、さらに環境意識を喚起する、消費エネルギーの「見える化」も備える。
4月から新入社員研修がここでスタートするが、最大350人が宿泊でき、新入社員の合同研修中にも他の研修をすることが可能。本社以外のグループ企業や、将来的には九州電力配電委託工事会社(14社)の研修も実施し、技術の向上に幅広く寄与していく姿勢だ。
安全教育にも力を入れる。施設内に、過去の事故の事例、先人の災害体験、焼きただれた配電線など事故の重大さを物語る品々、事故に遭った社員の家族の手紙などを陳列した展示室と、安全教育の場とする座学室を備えた「安全伝承館」を設置、同社の経営方針にも挙げている「安全文化の構築」を、社員の意識づくりを通じて推進する目的だ。
橋田社長は「九電工の安全文化とは、事故の原因を真摯に究明し、二度と起きないよう対策を講じること。安全意識を高揚させ、どうしたら災害を防げるか、社員自らが考える場としたい」と語る。
また冒頭に挙げた三つの柱のうち「人」の育成に関連し、九電工アカデミーには、「人格形成、“志”教育の場」も設ける。別棟として、“道場”をイメージした64帖の座敷と和室2部屋を備えた和風の「庵」を4月着工、10月完成予定で建設。「ここでは徹底した精神教育を行ない、特に新入社員に、“九電工魂”を植え付けたい」と橋田社長は思いを語る。
庵では、著名な講師を呼び座敷で車座になっての研修や、禅僧による座禅・瞑想の指導など、精神修養的な研修を想定。和室は華道、書道、茶道などの趣味・文化活動の場、また、来客をもてなすスペースとして、あるいは研修生同士のふれあいの場としても利用をうながす。

マレーシア、東北に拠点展開

同社はこの3月期決算で営業利益が大幅ダウンの見通しとなっている。新年度の最大のテーマとして橋田社長は「猛省の上に立ってⅤ字回復」を掲げ、「配電工事部門の収益力強化と必要受注量の確保」、「首都圏エリアの収益力の向上と経営基盤の強化」、「太陽光発電やメガソーラーなど新エネルギー関連の営業強化」を推進するとともに、昨年設置した経営効率化委員会を中心に、徹底した経営構造改革に取り組む。
「Ⅴ字回復のためには、殻を破らなければいけない」という橋田社長は、動物に例えて「脱皮直後の殻が柔らかい時は、外敵に襲われたらひとたまりもない。しかし、そのリスクも負ってでも、あえて一歩を踏み出していく」という決意のもと、新年度、拡大展開も開始する。
早ければ今春、マレーシアに事務所を開設。円高によって日系企業の海外進出が加速しているという背景もあるが「基本的に仕事があるから出ていくのではなく、まずは踏み出す。じっくりと腰を据え、得意分野の電気・空調管だけではなく、環境・新エネルギー関連なども含め幅広く対応していきたい」という。一方、国内でも4月1日、東京本社管轄下で、東北エリア初となる拠点「東北支社」を仙台市に開設する。
昨年同社は、社員の声を集約した「20年後の九電工のありたい姿」を策定した。その一つに挙げられた「全国展開、海外展開する九電工」を現実のものとすべく、その第一歩を踏み出していく。

橋田 紘一 社長
福岡市出身、1942年9月29日生まれの69歳、県立修猷館高校—慶應義塾大学経済学部卒業。趣味は音楽鑑賞

 

企業DATA
所在地 〒815-0081 福岡市南区那の川1-23-35
TEL 092-523-1691
FAX 092-524-3269
URL http://www.kyudenko.co.jp
創業 1944年12月
資本金 79億188万円
年商 2,264億円(2011年3月期連結)
事業内容 総合設備工事業
従業員 5,871人(2012年2月末現在)
出先 東京本社、(支店)福岡、北九州、大分、宮崎、鹿児島、熊本、長崎、佐賀、関西、沖縄
関連会社 九州電工ホーム㈱、㈱昭電社

(ふくおか経済EX2012年)