FEATURE

ふくおか経済EX 2015

㈱ワイエスピー


豆乳製造機械のパイオニア新装置投入で成長への布石

(写真上)第5回ものづくり日本大賞「内閣総理大臣賞」授賞式(2013年)新開節夫社長(左から3番目)以下5人の開発メンバーが表彰を受けた。
(下段左)豆乳製造装置「エコスター」、すべて受注生産。(中央)食品加工装置「新含気調理システム」(右)新設した水工場の製造ライン

創業以来、豆乳・豆腐製造装置の開発を手掛けてきた㈱ワイエスピー。2011年6月、製造工程を大幅に短縮した「エコスター」の開発を機に全国へと知名度を上げている。

プラントの大革命「エコスター」

豆乳の製造時間を従来の60分の1にまで短縮した豆乳製造装置「エコスター」。長年、豆腐メーカーと取引実績があった㈱ワイエスピーが業界の課題解決に取り組むべく開発した画期的な製品だ。
従来製法は原料の大豆を柔らかくするため、水に20時間ほど浸す必要があり、この間にうまみ成分が水中に溶け出し品質向上を妨げる要因ともなっていたが、エコスターは大豆を水に長時間浸す浸漬工程を完全に省いたのが大きな特徴。大豆を粗びきし、表皮をむいた上で水を入れ、大豆を細かく破砕し、特殊な釜で均一に熱する。原材料のぶれの原因ともなる浸漬工程を省いたことで、原材料の大豆の酸化がないうえ、大豆の栄養成分や旨みが溶け出さず、20分程度で甘味の強い高品質の豆乳を製造できるようになった。さらに、これだけに留まらず、各工程を一本化。給排水設備の負担を軽減し、生大豆から豆乳製造までの工程を自動化にしたことによるランニングコストの削減は大きく、装置の設置スペースも縮小。気温や湿度に応じて水を吸収する時間が異なるため、製造者の長年の経験が必要な浸漬工程がなくなり、安定した製品製造が可能になった。また、製造時間の大幅短縮により、見込み生産を軽減でき、急な注文にも対応できる。「前日から仕込まなければ豆腐ができないという業界の常識を技術力で変え、短時間で安全、おいしい豆腐を安定的に生産できる装置を開発できたことは大きな誇り」と自信を覗かせる新開節夫社長。新開社長以下5人で開発メンバーを発足させ、製品化にこぎつけたエコスターは2013年9月、第5回ものづくり日本大賞で最高賞の「内閣総理大臣賞」を受賞。首相官邸で安倍晋三首相から表彰を受けた。この受賞を機に製品とともに同社の知名度は一気に拡大。外食チェーンや海外からの問い合わせも後を絶たない。
そして、エコスターの開発から4年。いよいよ生産を本格化する。昨年6月には本社敷地内の工場を増築し、生産ラインを整備した。3mの高い装置に対応し、工場は一部2階建て9mの高さにし、広さも2倍に拡張。すべて受注生産で1台5000万円と決して安価な価格とは言えないが、すでに多数の納入が決まっている。

今夏めどに水事業に参入

「今が転換期。新たな柱を構築する必要性を感じている」と新開社長。今夏めどに、もともと敷地内で湧き出ていた天然炭酸水素イオンを多く含有したアルカリ性の低張性冷鉱泉水の販売を開始し、水事業に新規参入する。水素イオン濃度(pH)が8.5以上の珍しい泉質。ペットボトル容器につめ、小売店を中心に売り出していく。
さらに、新工場の空きスペースを活用した新事業も模索中で、このほど、食品加工の大型製造装置「新含気調理システム」を導入した。同装置は大型のステンレス製の窯を中心に波状型熱水噴射、加熱・冷却・殺菌機能などを搭載し、50以上のパーツで構成される精密装置。袋の中で調理し連続殺菌で、味をそのままに封じ込めるため常温で長期保存ができるのが特徴だ。さまざまな調理加工食品に対応でき、近年は防災食の需要もあるという。「製造食品は検討段階だが、水事業参入を機に自社装置でつくった豆乳、大豆食品など関連商品を製造していきたい」と新たな可能性を広げ将来の布石を打つ。

本社工場(敷地面積1万㎡)

 

企業DATA
所在地 〒820-0112 飯塚市有井320-19
TEL 0948-82-5050
FAX 0948-82-5051
設立 1985年6月
資本金 1,000万円 事業内容 豆腐製造機械の製造販売
従業員 15人
関連会社 ㈱大和 大和協同食品
URL http://www.ysp-soybean.com

採用情報
募集職種 食品機械製造・営業・設計
応募資格 高校・大学卒
採用予定 5人
担当 新開

(ふくおか経済EX2015年)