FEATURE

ふくおか経済EX 2010

㈱アペックスフーズ


10周年で年商10億円突破、新たなステージへ弾み

(写真)龍の家の歴史がスタートした上津店

渾身の麺あげで「ありがとう」伝えた周年感謝祭

ラーメン店の暖簾を掲げて10年が過ぎた昨年5月17日、創業店である「龍の家 上津店」には、雨にもかかわらず早朝から開店を待ちわびる人が長蛇の列をなしていた。
「龍の家10周年感謝祭」と称して実施したラーメン1000杯無料の大キャンペーン二日目。当日はその麺あげのすべてを店主である梶原龍太社長自らが担当した。来店客一人ひとりに感謝の気持ちを込め、並大抵ではできない1000杯の麺あげを一人で務め上げる。近年は店舗が増えるに連れ、厨房に立つ時間は限られていたが、この日ばかりは10年間足を運んでくれた来店客へ、精一杯の「ありがとう」を伝えた。そしてそれは11年目という新たなスタートを切るうえでの強い決意の表れでもあった。

創業から10年間の歩みを綴った周年記念誌。これまでの歩みと店づくりへの熱い想いを次世代に伝える意味を込め、「バトン」と名付けた

社員はアルバイトからの昇格者が90%

1998年12月、龍の家の創業に先立ち㈱アペックスフーズが誕生。翌年2月からは梶原社長をはじめ、当時の創業メンバーが、今でも師と仰ぐ河原成美氏のもと、「博多一風堂」で5カ月間に及ぶ厳しい住み込み修行を経験している。現在の上津店の兼重則夫店長と麺打場の大日方賢哉場長は、その時からの貴重な仲間として、今日まで社長と苦楽を共にし、龍の家の発展を支え続けた。
「創業期は自我の強さばかりが先行して、ただがむしゃらに突っ走っていた感があった。しかし今改めて振り返ると、店を愛する多くの信頼できる仲間がいたからこそ、様々な困難を乗り越えることができた」と感慨深げに語る梶原社長。創業から3年ほど経過し、これから本格的な店舗展開に向けた基盤を構築しようとした時、数百万円を投じ正社員の採用活動をしたこともあったが、入社しても長続きしない社員が多かった。「龍の家のラーメンを全国に」と強い気概で臨んだ社長の想いとは裏腹に、途中から入社した社員には、店の風土や方針がうまく伝わらず、雇用のミスマッチを生んだのだ。
大事なのは店の理念というベクトルをいかに共有するかということ。実際に今の社員は、創業メンバーも含めてアルバイトから昇格した人が実に90%を占め、各々が龍の家の経営理念や目指すビジョンに共感して働いている人ばかり。そういったスタッフに支えられながら、同社は今日まで歩みを進めることができた。

09年7月に開業した「龍の家 小滝橋通り店」

東京進出に加え上海での和食店事業も着手

本拠の久留米市内を含め福岡県内に3店舗、そして熊本県内に4店舗と順調に店舗数を増やし、地元で知名度を高めてきた同社は、昨年7月、東京新宿に「龍の家 小滝橋通り店」をオープン。路面店として初の東京進出を果たした。ラーメン激戦区にありながら、堅調に売り上げを伸ばし、今年2月には日本テレビ系列で放送されたバラエティ番組において出演者お薦めの店として紹介され、大きな反響を呼ぶ。
09年10月期の決算ではこの東京での出店効果もあり、当面の目標だった売上高10億円を突破。10周年という節目での到達は、今後の展開に大きな弾みとなった。
一方で08年1月には、中国上海に関連会社「栄龍」を設立。現地に和食の「和楽亭(わがや)小羽(こはね)」を開業する新ビジネスにも着手した。同店では、店主の日本食として徹底的にこだわりぬいた味とサービスが現地の日本人客から好評を博し、今では、個室席が無いにも関わらず、在上海日本国総領事館の駐在人や要人らも多く利用する名店へとのし上がっている。

関連会社が上海で経営する和食店「和楽亭 小羽」。日本総領事館関係者らも多く利用するなど現地では有名店に

店舗展開見据え製麺工場を拡張移転

4月にはこれまで上津店に併設していた製麺工場を久留米インターの近くに拡張移転した。同工場では最大20店舗分を賄える製麺設備やスープの仕込み場、さらにテストキッチンを完備。今後のさらなる店舗出店を見据えた製造基盤を構築するとともに、テストキッチンスペースでは、新業態店の展開も視野に入れた商品開発を行うなど、新たなチャレンジにも余念がない。
「10周年を経て感じたのが、常に初心を忘れないということ。これまでの龍の家を一緒に築いてきてくれた多くの仲間やOB、OGの想いを胸に原点回帰を図り、次のステップへの糧としたい。特に味に対する指導は徹底していく」と抱負を力強く語る梶原社長。今後は、これまで以上に厨房に立つ機会が増えそうだ。

梶原 龍太 社長
かじわら・りゅうた/久留米市出身、1972年2月6日生まれの38歳、九州産業大学商学部商学科卒業。大手ディスカウントストアに勤務後、1998年にアペックスフーズに入社、2006年4月から社長を務める。趣味はビデオ鑑賞、ドライブ

 

企業DATA
所在地 〒830-0045 久留米市小頭4-136-1
TEL 0942-38-5800
FAX 0942-32-0153
創業 1999年5月
設立 1998年12月
資本金 1000万円
事業内容 ラーメン店の経営、土産用ラーメンの販売
年商 10億1325万円
従業員 19人(パート含めると236人)
出先 [店舗](久留米市)上津店、久留米インター店、(福岡市)キャナルシティ店、(熊本市)ワシントン通り店、ワンダーシティー店、益城インター店、光の森店、(東京都)小滝橋通り店 [麺打場]久留米市
関連会社 栄龍(中国・上海)
URL http://www.tatsunoya.net/

(ふくおか経済EX2010年)