FEATURE

ふくおか経済EX 2015

㈱アキラ水産


創業以来のDNA「顧客目線」を貫き業容拡大続く

(写真)市場開放「市民感謝デー」でのアキラ水産の売場

大正7年に柳橋にあった「明市場」をルーツに仲卸参入、量販店対応、加工参入と業容を拡大してきたアキラ水産。そこには一貫した「顧客目線」があった。また、福岡商工会議所副会頭に就任した安部泰宏社長は、一般市民への魚食普及とともに福岡の街を盛り上げることにも尽力している。

ISO9001を更新

鮮魚仲卸地場トップの㈱アキラ水産が3月、品質マネジメントシステムISO9001の更新を済ませた。2006年に認証取得したものだが、そもそも鮮魚仲卸としてのISO取得自体が全国で初めてのことだった。そんな業界初の事を成し遂げることができたのは、同社の中に1918年の創業からずっと変わらない「顧客目線」のDNAが生きているからだ。
同社のルーツは今の柳橋連合市場の場所にあった柳橋廉売市場の後に、安部泰宏現アキラ水産社長の祖父・栄次郎氏と伯父の明氏、父の篤助氏が開いた「明市場」。当時から店は多くの客で喧騒の毎日だった。魚がどんどん売れていき、魚を入れる箱だけが積み重なる。これは「箱儲け」(箱の分だけの儲け)として今で言う「薄利多売」の証で、既に顧客のために「安く魚を提供しよう」という「顧客目線」が確立していた。その後は「明百貨店」へと発展。戦後になると大型鮮魚店を経て1960年に仲卸業に転向し、この頃から安部社長による舵取りがなされた。
安部社長は早速「顧客目線」に立ち、時代のニーズを察知。「スーパーの時代がやってくる」として、いち早く量販店向けの品揃えに対応。2000年代に入ってからも顧客の加工作業を軽減させるため、仲卸としては全国でも珍しく魚市場内に自社の加工専用工場を設置。魚をさばいておろす1次加工から2次加工、ひいては洗浄やパッキングといった3次加工まで施している。ISO取得もこの頃で、顧客のために安心・安全追求の環境をつくるためだった。13年にはその加工場を大幅改装。殺菌効果のある空気清浄装置を備えた「包装加工室」など衛生管理をさらに徹底した。これらの衛生環境は取引先の大手スーパーなどからも高い評価を受けている。また、改装後の加工場は最新の冷風干物用乾燥機なども完備。これにより生み出された「プレミアム干物」シリーズは、非常に高い鮮度のため、その色合いが生身と見紛うほどだ。

 

プレミアム干物セットとオリジナル明太子の「あきらめんたい」

「魚食普及」にも力注ぐ

「顧客目線」と同時に、安部社長は市民全般に向けた魚食普及にも尽力している。それは言わば、“魚の食べ方を知らない”情報不足な世代たちに向けて、魚の美味しさ、美味しい食べ方を発信するもので、その際たるものが長浜魚市場の開放イベント「市民感謝デー」(安部社長が会長を務める福岡魚食普及推進協議会が主催)だ。毎月第2土曜日に開催され、鮮魚販売だけでなく料理教室なども実施。毎回数千〜1万人が来場し、リピーターも多く地元市民の間ではすっかりお馴染みとなった。最近では外国人客も少なくない。この他、アキラ水産では社員を量販店の店頭に派遣し、買い物客に魚の調理の仕方といった情報を提供している。

来店客でごった返す「明市場」。今のにぎわい(メイン写真)と変わらない。中央左に立っているのは創業者で安部社長の祖父・栄次郎氏

安部社長が福岡商工会議所副会頭に

安部社長自身は昨年11月、福岡商工会議所副会頭に就任した。卸売商業部会長などを経ての就任で、各方面の企業トップとの幅広いネットワークを生かした会議所と地元経済界とのパイプ役が期待されている。「何でもオープンにし、みんなで福岡を活性化しましょうよ」とは就任時の言葉。魚食が根付く福岡を、そしてその福岡自体を、大いに盛り上げてくれそうだ。

安部 泰宏 社長
あべ・やすひろ/福岡市出身。1939年3月29日生まれの76歳。福岡大学付属大濠高校卒。趣味はゴルフ。全国水産物卸組合連合会副会長。九州地区水産物卸組合連合会会長。福岡市鮮魚仲卸協同組合理事長。福岡魚食普及推進協議会会長。地場経済界に広く交流があり、04年7月から福岡城西ロータリークラブ会長。05年4月に藍綬褒章、11年6月に旭日雙光章を受章した。福岡商工会議所では議員(卸売商業部会長)など経て、14年11月から副会頭

 

企業DATA
所在地 〒810-0072 福岡市中央区長浜3-11-3-711
TEL 092-711-6601
FAX 092-715-3293
創業 1918年(大正7年)
設立 1947年4月
資本金 2,000万円
事業内容 (福岡市中央卸売市場)鮮魚仲卸全般
年商 90億円(グループ)
従業員 約90人(グループ)
関連会社 ㈱コウトク水産、㈱一心、㈱安部水産、㈱アキラ・トータルプランニング
URL http://www.akirasuisan.co.jp

(ふくおか経済EX2015年)