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ふくおか経済EX 2020

イフジ産業(株)


新商品開発で卵の可能性に挑む独立系液卵トップメーカー

(写真左)公式サポーターのカネキン氏
(右上)ボトル入りの卵白由来のプロテインパウダー「REVOPRO」
(右下)新型割卵機

卵白由来のプロテイン開発でBtoC市場への参入を図るイフジ産業㈱。さらに卵の新たな可能性を求めて研究開発が続く。本業の液卵事業は好調を維持し、将来を見据えた体制づくりが進む。安定した経営基盤を支えに、持ち前のベンチャー精神で新境地を開く。

卵由来プロテインでBtoC市場参入

独立系トップの業務用液卵メーカー・イフジ産業㈱は今春、粉末卵白を用いたプロテインパウダー「エッグホワイトプロテイン」(REVOPRO)を発売した。
日本の粉末プロテイン市場は乳清(牛乳)を使ったホエイプロテインと大豆由来のソイプロテインが大半を占める。特に吸収が速く筋肉増強に適したホエイプロテインは、ボディビルやフィットネスなどで広く愛飲されている。ただ、日本人の4人に1人は乳糖不耐症といわれ、海外に比べ体質に合わない人も多い。一方、卵白プロテインは輸入品しかなく、ホエイに劣らない吸収率と体内利用率の高さを持つものの、臭いや味に難点があり、日本では普及が進んでいない。
同社は長年の鶏卵加工の強みと、調味料製造で培った日本化工食品の開発力を生かしてこの問題を解消し、飲みやすいチョコテイストに仕上げた。
「乳由来の原料を一切使っていないので、乳糖不耐症の方も安心して摂取できる。良質なたんぱく質を摂取するトレンドが世界中に広がるなか、まずはボディビルやフィットネスの市場で普及を進めたい」と藤井社長。これまでBtoB向けには茶わんむしベースや全卵・卵白の凍結ミニパックなどの加工品を開発してきたが、新商品で個人市場に切り込む。

カネキン氏とサポーター契約

売り出しに当たっては、人気のプロボディビルダーのカネキン氏とサポーター契約を結び普及を図る。以前から同社が製造する冷凍卵白商品の愛用者で、今回の開発のきっかけの一つにもなった。
同社は昨年、自然食品のベンチャー企業・フレンズファームと250gパック入りの冷凍卵白を共同開発。運営するネットショップ「フィットネス食品専門ストア」で販売してきた。愛用者でもあったカネキン氏は個人的に自身のYouTubeチャンネル「Kanekin Fitness」で取り上げてきたが、配信のたびに売り上げが伸長。同サイトで人気ナンバーワン商品となった。同時期に、同社は水に溶けにくい粉末卵白が溶解する加工方法を発見し、卵白由来のプロテインの商品化を思いついた。
さらに同社では別のベンチャー企業と組んで卵殻膜を分離することに成功。有用成分を含有する卵殻膜の大量生産が可能となった。具体的な活用法は未定だが、他社と組んで医薬品や化粧品をはじめ様々な分野で可能性を探っていくという。

(写真左)共同開発した冷凍卵白商品(右)分離に成功した卵殻膜

販売数量は7期連続の過去最高へ

本業の液卵事業では、第3四半期の販売数量が前年同期比4.4%増の4.2万tと過去最高を記録。通期でも8期連続で前期を上回り、7期連続で過去最高を更新する見込みで、6期連続の増益と過去最高益も視野に入れる。新展開も好調な本業の支えがあって可能となったといえよう。
設備増強では本社工場に新型割卵機を設置した。本年5月には関東に続き関西工場にも従来の2.5倍の処理能力を持つ自動充てん機を導入予定。人手不足時代に対応して、自動化、省力化、効率化が進む。働きやすい職場づくりのための施策も適宜に進め、「ベースアップを中心に待遇面の改善を地道に進めている」と選ばれる企業に歩を進める。2017年3月に東証1部上場を果たした同社。1部上場に相応しい会社に向けて品質向上を進める一方で、卵の未知の可能性を追求し、創業当初からのベンチャー精神で挑戦する。

藤井 宗徳 社長
ふじい・むねのり/福岡市出身。1975年6月2日生まれの44歳。99年同社入社し、2007年6月取締役に昇格。08年3月常務。09年11月専務を経て14年6月社長に昇格。趣味は旅行

 

採用情報
募集職種/総合職(営業、研究開発、製造・生産管理など)
応募資格/大学卒、大学院卒
採用予定/各職種とも若干名
年間休日/122日
問合せ先/TEL.092-938-4561

(ふくおか経済EX2020年)