FEATURE

ふくおか経済EX 2011

イフジ産業㈱


グループ展開で上昇気流に乗る独立系液卵トップメーカー

(写真)粕屋郡粕屋町の本社屋

過去最高の売上見込み、単体でも再び100億円の大台に

前期決算では前期比約3倍の増益を果たし、V字回復を見せたイフジ産業㈱。今期に入ってからはその勢いを増し、第3四半期連結決算では売上高が前期比28.2%増の88億5800万円、経常利益が同8.9%減の6億2700万円となった。大手製パン・製菓業界向けの好調な販売を背景に順調に売り上げを伸ばし、「経常利益は少し落ちているが、最終利益はむしろプラスで推移している」と藤井社長はその状況を伝える。
こうした状況から通期予想では、昨年11月に上方修正した予想をさらに修正した。連結売上高は前回予想を12.6%上回る116億4800万円に修正。単体でも14.4%上回る103億4400万円を見込みで、過去最高だった102億3900万円を更新する予想となった。

子会社の調味料事業が第2の柱に

特に、一昨年11月に子会社化した日本化工食品の調味料関連事業では、主力商品の粉末調味料の新製品販売が好調に推移。売上高は9億8500万円、営業利益は1億3300万円を計上した。通期売上高は12億8300万円を見込み、経常利益では前期の4倍を超える1億3900万円を予想している。
利益面で飛躍的な成果を上げている理由として、子会社の社長を務める藤井宗徳専務は次の2点を挙げる。「一つ目は選択と集中で商品と顧客を絞りこんだ点で、少量多品種の営業手法を見直して親会社の大量生産型の考えに少しシフトした。もう1つは営業と開発で横断的なチームを組み、顧客ニーズにダイレクトに応えることで受注確率の向上を図った」。異業種の手法をそのまま導入することには弊害もあるが、子会社のポテンシャルを生かしながら適切に取り入れたことで成果を上げている。
藤井社長もその成果を「今まで卵一本槍だったが、これで二本足になった」と評価する。調味料事業が第2の柱に成長しつあり、初のグループ経営が軌道に乗ったといえよう。

日本化工食品の社長を務める藤井宗徳専務

高機能・高付加価値商品の開発を加速

一方、親会社のイフジ産業では、卵白だけを使った低カロリー、ノンコレステロールの茶わん蒸しベース「ホワイト」を開発し、昨年10月から販売を開始した。
最大の特徴は、特殊製法で従来の茶わん蒸しベースに比べカロリーを約50%、コレステロールを約99%カットした点で、ヘルシーなノンコレステロール商品として売り出した。今後は病院食としても本格的に販売する考えで、実際に老人ホームなどの介護施設で広がり始めている。新商品開発は一昨年の製菓用凍結卵白に続くもので、今後はこうした高機能・高付加価値商品の開発を加速する。

グループ展開で本体にも相乗効果

グループ経営は親会社にも相乗効果として現れている。日本化工食品では年間30〜40種類の製品を商品化している。そのためにサンプルとして開発する製品は、実に800種類にも及ぶ。新商品の好調な販売の裏側には、こうした目に見えない積み重ねがあるが、「開発のスピード感と量に圧倒された。味に対する感覚が敏感で、いわば味のプロフェッショナル」と藤井専務は表現する。
一方、親会社でも研究開発に力を入れているが、主力の液卵事業は素材的な要素が強いため、味に対してはそれほど敏感になる必要はなかった。しかし、前述したように高機能・高付加価値商品の開発は、戦略上の重要課題にもなっている。しかも開発ペースを加速する必要があり、ここでは逆に、子会社の少量多品種生産の考え方を取り入れようというわけだ。
例えば、同社では数種類の「茶碗蒸しベース」を商品化しているが、その展開の上でも“味”は欠かせない要素。同社では視察のためスタッフを子会社の開発現場に送り込む計画で、親会社の商品開発にも生かす考えという。

千葉県市原市の日本化工食品の工場全景

初の中国人留学生を採用

グループ展開で勢いを増した同社だが、国内市場の縮小という点では液卵業界も例外ではない。高機能・高付加価値戦略はその対応策の一つだが、この春には初の中国人留学生の採用に踏み切っている。「すぐというわけではないが、可能性を含めて探りたい」と、将来的な海外進出を視野に入れた展開を見据える。
また、こうした展開とは別に「子会社を含めて積極的にM&Aを進め、シェアアップを図りたい」と藤井社長は抱負を語る。1972年10月の設立以来、積極的なM&Aで全国にエリアを広げ、独立系のトップメーカーとして業界初の上場を果たした同社。その地位に甘んじることなく、創業当初からの“ベンチャー精神”を失うことはない。
3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震では、茨城県水戸市の関東工場が損害を受けた。幸いにも従業員全員の無事は確認されたが、3月15日現在で生産再開のめどは立っていない。同社は地震発生翌日には愛知、京都、福岡にある他の3工場で増産体制を整え、その不足分を補う供給体制を構築した。
取引先の製パン業者では、被災地に送る物資供給のため増産に乗り出す。原料供給(事業継続)は社会的な責任である。大きな使命を果たすべく、社員一丸となって懸命の努力を続けている。

藤井 徳夫 社長
ふじい・とくお/1941年2月13日生まれの70歳。中国、天津生まれ。九州大学法学部卒業直前に父親が急死、卒業後は家業の養鶏場を継承する。養鶏場から液卵加工業への転換を進め1972年10月に同社を設立、以降積極的なM&Aなどにより全国展開を推進する。2001年には、現大阪証券取引所ジャスダック市場に株式上場。趣味は読書

 

企業DATA
所在地 〒811-2312 福岡県粕屋郡粕屋町戸原200-1
TEL 092-938-4561
FAX 092-938-5537
創業 1964年4月
設立 1972年10月
資本金 4億5,585万円
事業内容 液卵・冷凍卵の製造および販売、鶏卵加工製品全般・その他惣菜食品の販売
年商 94億9,496万円(10年3月期連結)
代表者 藤井徳夫
従業員 90人
出先 (工場)福岡工場(本社)、関東工場(水戸)、関西工場(京都)、名古屋工場(安城) 関連会社 日本化工食品㈱、㈱春日ビル
URL http://www.ifuji.co.jp/

採用情報
募集職種 ①営業 ②研究開発
応募資格 2012年大学卒業見込み(全学部全学科)
採用予定 7人(大卒・子会社含む)
問合せ先 TEL.092-938-4561(代)
担当 三宅、松林

(ふくおか経済EX2011年)