FEATURE

ふくおか経済EX 2009

株式会社 縁


建築積算導入で建築コストの適正化・リスク回避を訴求

(写真)3D画面で作業の進捗状況をひと目で確認できる(左)。インターネットを通じ、全国何処にいても同じ物件をリアルタイムで同時作業できるシステム(右)

建物の部位別に数量を集計し、建築費用を算出する積算。「迅速、正確、親切」をモットーに全国で建築積算業を展開する㈱縁は、数的根拠を持って明確な建築コストを算出することで適正価格をつくる重要性を訴え続けている。その結果、マンションの耐震強度偽装事件が発生したころから、国内のアバウトな建築価格の設定が問題視され、積算の必要性が改めて重要視されるようになった。現在では、創業以来16期連続で増収を続け、九州でもトップクラスの積算会社に成長している。

全工程連動型建築積算システム
「EN system グラフィック」販売代理店を募集

国内で初めてインターネットを通じ、どこにいても同じ物件をリアルタイムで同時作業できる建築積算システム「EN CMsystem」を開発。そのシステムを基礎に、さらにパワーアップした「EN system グラフィック」をこの春、運用開始した。
従来の建築では、設計、積算、施工の各工程で分離発注を採用していたため、時間やコストがかかる上に発注者のイメージと実際の建物にギャップが生じるなどの課題があった。この新しいシステムは、設計から施工まで全ての工程を連動させているため、伝達ミスを防止し作業の効率化が図れるようになったのだ。また、設計段階で3D画面でレイアウトや壁、床の色あいなどを確認できるので、施主のイメージに限りなく近い建物が出来上がる。現在、同業者の利用や販売代理店を募集しており「積算業界の活性化につなげたい」と意気込んでいる。

数的根拠に基づいた建築物の査定で
事業主・金融機関をサポート

「建物の価値は、目に見えるものだけが全てではなく、壁面の裏側にある鉄筋コンクリート内や仕上げ材、構造によっても決まる。建物を建てるとき、鑑定するときなど積算をうまく利用してほしい」と業界の必然性を訴え、マーケット拡大に力を注いでいる。
ビルの建築時に金融機関が事業主に費用を一括融資するのが一般的だが、着工から完成まで時間がかかるため計画通りに進まず、不良債権の原因となる場合がある。手形発注も多いため、下請け業者が売掛金を回収できずに連鎖倒産するケースも生じるのだ。この、建築業界の大きな問題を解決するのが、積算による数的根拠に基づいた出来高査定の導入だ。1カ月ごとの工事状況に応じた費用を算出することで金融機関は月毎の融資ができ、リスク回避が可能になる。また、担保物件の評価においても土地の価値のみでなく、その建物を再び建築積算することで建物を見直すことができ、買い手に価値をアピールできる。買い手にとっても物件の価値が明確に分かることで安心感が生まれるのだ。「相場ではなく、オーナーの立場となり、価値の根拠を数値化した具体的な提案をしていく。さらに積算の認知度を高めたい」。

本社が入居する博多区住吉の「福岡GOA」ビル

専門教育機関の確立で
次世代のリーダーを育成

1993年8月に寳部社長は同社を独立開業した。個人事務所としての運営を考えていたが、賛同した従業員7人が集まり翌年6月、同社を設立。当時について「会社一丸となり、社員1人ひとりが何人分もの働きをした。マンションを購入したばかりなのに、有無を言わず遠方への転勤を承諾して頑張ってくれた者もいる」と感謝の気持ちを忘れない。阪神大震災の時には「災害を会社の利益に変えるべきでない」と被災地での新規顧客開拓をストップした。このような寶部社長の強い志に従業員は一丸となり、創業以来16期連続で増収を果たすような九州でトップクラスの建築積算会社に成長したのだろう。
現在では「いつまでもトップダウンの運営を続けていては、企業は衰退する」と社内基盤整備を進めている。これまで本社、広島、大阪、名古屋、東京事務所の各拠点に役員を配置していたが、これに加え、昨春から会社全体の営業、生産性、技術育成の部署を統括する役員を配置した。社員が個々の仕事という意識ではなく、拠点間や部門間の壁を越え、全社的な仕事として捉えるように意識改革できれば、業務効率化はもちろん、おのずと収益確保につながるのだ。
また次世代を担うリーダーの育成機関として3年後の完成をめどに専門教育機関の整備を進めている。「どんなに技術性の高いシステムが開発されても、昔ながらの手法で数字を拾うことができ、全体を把握できる技術者がいなければ、生産性を高めることはできない」。新入社員に対しては、この教育機関で半年間の研修を実施。幹部職員が講師となり、技術指導や仕事の段取り、仕事に対する心得などを教育する。また、社員旅行は毎年恒例となっており、「できるだけグレードの高いホテルに宿泊するよう計画している。少しでもいい建物を見ることで、楽しみながらもスキルアップにつながれば」と期待を込める。「仕事とプライベートのメリハリをつけて、ハングリーな人材に入社してほしい」と笑顔を見せた。

寳部 勝彦 社長
宮若市出身、1961年12月5日生まれの47歳、国立有明高等専門学校卒。趣味はスポーツ

 

企業DATA
【所在地】〒812-0018福岡市博多区住吉4丁目1-5福岡GOAビル8F
【TEL】092-452-1120
【FAX】092-452-1170
【創業】1993年8月
【設立】1994年6月
【資本金】1200万円
【事業内容】建築積算業、積算ソフトの販売・保守建設工事一般
【年商】13億円(09年4月期見込み)
【代表者】寳部勝彦
【従業員】100人
【出先】広島、大阪、名古屋、東京

採用情報
●募集職種:建築積算
●応募資格:建築の経験者や技術者および建築を学びたい方※全国の希望勤務地に配属
●採用実績:08年度15人、09年度2人
●採用予定:10年度5人
●問い合わせ先:TEL092-452-1120
●担当:佐藤

(ふくおか経済EX2009年)