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グループ20周年、産学連携で挑む
医療イノベーション戦略

（写真）遠藤正英主席研究員（中央）ら、SACRAのプロジェクトメンバー

医療現場のニーズと先端技術を融合したリハビリ支援ロボットが共同特許を取得するなど、独自の研究機関「SACRA」の産学連携事業が注目を集めている。リハビリの革新や医療従事者の育成にも貢献しており、今後のウェルビーイングを重視した取り組みと合わせた展開に期待が高まる。

産学連携による革新的な研究開発に新活路

医療現場と先端技術を結びつけた新たな取り組みとして、桜十字グループが有するリハビリテーション機器の研究機関「SACRA」（桜十字先端リハビリテーションセンター）の産学連携事業に注目が集まっている。
“より良いリハビリを提供したい”という想いから、福岡事業部がイニシアティブを取って2018年に発足されたSACRA。様々な教育機関、医療機関、民間企業、研究者ら産学医が三位一体で共同事業・研究を重ね、研究費の配分を支援する「府省共通研究開発管理システム（e‐Rad）」にも登録された国から認められている数少ない研究機関の一つだ。
現在アライアンスを組む企業や団体は20を超えており、桜十字福岡病院ではそこで開発された機器の臨床検証や実証を行いながら、患者のリアルな声やデータを改良点としてフィードバックする役割を担う。
このプロジェクトの一つとして、北九州市立大学と共同で開発した手指リハビリテーション支援ロボット「Narem（ナレム）」は、2024年夏に共同特許を取得した。同ロボットは脳卒中や脊髄損傷などによる手指の麻痺を改善させる新たな治療法として、回復期のみならず、維持期（生活期）の脳卒中患者に対しても一定のリハビリ効果があることが証明されており、製品化はもちろん、手指麻痺に対する新たなリハビリ法の確立に向け日々改良を重ねている。

（写真）手指リハビリ支援ロボット「Narem」。コンピュータが各関節の動きをコピー、左右対称に動きを変換させ、麻痺した方の手指に装着したグローブを空気制御で瞬時に動かす仕組みとなっている

研究機関としてオープンな組織文化を醸成

「病院が持つ豊富な臨床データや現場のニーズに基づいて機器を開発できているのは大きな強み。しかもその臨床データは新たな医療技術やサービスの開発に役立つのであれば惜しまず提供してきた。これからも門戸を広げ医療・福祉の発展・活性化に貢献していきたい」と語るSACRAの遠藤正英主席研究員。このプロジェクトは日頃から臨床データを収集・蓄積し研究開発に活用する文化の醸成と、情報を積極的に開示し外部からの意見やアイデアを取り入れるオープンな組織文化を大切にしている桜十字グループならではの取り組みを象徴するものだ。
このように既成概念に捉われない自由な発想と職域の垣根を越えた様々な人との交流によって、新たな発想やイノベーションが生まれる環境を整備してきたSACRA。院内ではスタッフのスキルアップを支援する独自のキャリアラダーを設け、また外部へも人材派遣や研修会、セミナー開催などを通じて医療従事者の教育機関としての役割も担うなど、その活動は今後の医療・福祉業界に新たな可能性を示すものとして期待されている。

（写真）SACRAで研究・開発された様々なリハビリ機器は桜十字福岡病院の臨床で日々検証、実証が行われている

ウェルビーイングの地平を拓くグループへ

2025年に創業20周年を迎えた桜十字グループ。同グループはこれまで、「生きるを満たす。」を理念に、メディカルから社会のニーズに応えるヘルスケアへと事業を拡大してきた。そしてこれからの10年に掲げたスローガンが「WELL-BEING FRONTIER（ウェルビーイング・フロンティア）」だ。これには人生100年時代を見据え、身体、精神、社会のあらゆる側面から人々の真の幸福を追求していくという強い意志が込められている。
企業再生や社会創生にも取り組むなど、枠にとらわれない多角的な事業展開でウェルビーイングの未来を切り拓く桜十字グループ。新たなステージでの挑戦から目が離せない。

（写真）20周年を記念して作られたキービジュアル「WELL‐BEEES（ウェルビーズ）」。3体のキャラクターが意味する身体的·精神的·社会的のすべて満たし合うことで無限のウェルビーイングを目指すことを表現した

（ふくおか経済EX2025年）