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おせち市場で攻勢、OEM事業を本格化おせち市場で攻勢、OEM事業を本格化

(写真)昨年6月に稼働した田川工場。写真手前は事務所等。奥が工場棟、物流棟となる
今年6月、おせちなど食品全般を製造する新工場(田川市)が稼働した久松。新工場の年間最大生産能力は50万個超で、市場全体の1割を占める業界トップ水準。25年年末は昨年末の22万5,000個から大きく飛躍して30万個弱の販売を計画。新工場を生かしたOEM生産に力を注ぎ、売上高45億円を見込む。
おせち生産2.5倍の最大50万個体制に
2024年末のおせち販売で22万個5,000個を販売した同社。主力のEC・通販に加え、ふるさと納税、卸売の各分野で伸長した。
その勢いのまま、新年度も順調に販売見込みを増やしている。背景には田川市の新工場内での製造機能強化がある。新工場は商品の冷凍倉庫やテストキッチン付き撮影スタジオなど商品力や製品の管理能力を底上げする充実した設備を併設。年間最大生産能力を30万個増の50万個超に引き上げ、市場全体(約500万個)の1割を占める生産体制を構築した。
近年のおせち市場は共働き世帯の増加やライフスタイルの変化によって、百貨店や通販での予約販売が主流となり、冷凍・個食タイプの需要も拡大。消費者のニーズに合わせて商品の多様化が進み、ここ10年で和洋中を組み合わせた多彩なメニューや有名シェフ監修の商品が登場するなど高価格帯の需要も増加している。市場の拡大を受け、消費者とのつながりを生かしておせちの販売に新規参入する異業種の企業も着実に増えている。
そこで同社では増強した生産機能を活用し、おせちのOEM生産の受注に力を注いでいる。創業以来地元のホテルや料亭の料理人を下支えしてきた高級仕出しを源流に持つ同社の商品や仕掛品(おせち内の料理)は外販でも引き合いが元々多く、専属の営業人員を3人新規採用し、受託営業を積極的に展開。「ECおせち」の黎明期から楽天市場で急成長してきた同社の知名度も相まって、新工場を視察した取引先からの反応も上々で、初の展示会出店後には新規取引先が着実に増えている。
「現在の卸個数約3万個を、5万個に増やす道筋は立てることができたので、今期中に8万個に伸ばしたい。
将来的にはOEMだけで20万個に伸ばす計画。主力のEC・通販に加え、ふるさと納税、卸売と合わせて、早期に50万個体制を達成したい」と松田社長は意気込みを語る。田川工場がフル稼働した際の㈱博多久松との連結売上高は約70億円と大きく飛躍する計画で、25年4月期で31億円、来期は45億円を見込む。
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(写真)同社主力商品のおせちセット。写真は一番人気の「博多」(税込み1万5,800円) |
新工場を活用し総合食品企業へ進化
「おせち市場は成長分野だからこそ、今後競争は激しくなる。メーカーとして薄利の生産体制を敷くのでなく、他社にはない強みであるECノウハウを全方位に活用する。製造・販売間でシナジー効果を生み出し、成長軌道を描きたい」と語る松田社長。売り上げの拡大と並行して、社内の再整備に取りかかる。
まず着手したのが生産性と安全性の向上だ。食料品を取り扱う同社にとって商品の安全性は生命線とも言え、高い安全性を維持することはOEM生産を受注する上でも大きな強みとなる。現在は工場内の新たな品質管理の資格を取るため準備しており、粕屋町の本社工場と田川工場を連動させた生産性向上にも日夜取り組む。内部統制は従業員数の増加に合わせた新たな社内ルール、コンプライアンス体制の構築で、今後の成長カーブを描く上で重要な要素となる。そして、先程挙げた「BtoB」ラインの販促は順調に成果を挙げている。
これまで『ハレの日』の美味しさを提供する企業として成長を続けてきた久松。「お客様に『毎日がハレの日』を感じてもらえるよう、総合食品企業の実力を磨いていきたい」と決意を新たにする。
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松田健吾 社長 まつだ・けんご/福岡市出身。1979年10月18日生まれの45歳。福岡工業大学付属高校卒。18歳の頃から家業の仕出し屋「久松」で働き、24歳でおせちのネット販売に参入。以降、販売戦略、製造設計、経営戦略を立てる同社の屋台骨。2019年5月社長就任。趣味は飲食店巡り |
(ふくおか経済EX2025年)