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さらなる賃上げ目指し、経済が前を向く年に 北九州商工会議所
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週刊経済2026年新春特別号
「値下げしない」マインドが重要
3期目を迎えた北九州商工会議所(北九州市小倉北区紺屋町)の津田純嗣会頭は、本誌1月号「新年トップインタビュー」に応え、2026年に向けた抱負と展望を語った。以下、インタビューを抜粋。
―2025年を振り返って。
津田 昨年はトランプ関税のショックから始まった1年で、当初は特に自動車産業への影響が懸念され、実際に数字上でも少し落ち込みがみられた。しかし、現在では経済全体としてはそれなりの落ち着きを取り戻している。
日本国内では長らくデフレマインドが続いていたため、トランプ関税に対して製品価格を下げて対応する企業が増えることを危惧しており、私も率先して「絶対に値下げしてはいけない」と強く呼びかけてきた。結果として騒動の大きさの割には、関税を理由とした値下げに踏み切る企業は意外と少なく、全体としては大きな悪影響を受けずに済んだと認識している。
―地元企業の値上げ・賃上げの状況は。
津田 昨年、会員企業を対象に調査した「春季賃上げ調査」では、賃上げ実施企業は63%で、前年度比0・4ポイント増加。全業種・全規模の単純平均賃上げ率は4・17%で、こちらも前年度比0・38ポイント増加した。賃上げ額は1万1046円となり、1992年以来33年ぶりに1万1000の大台を突破した。
しかし、物価がこれだけ上がっている現状を鑑みると、まだ物価上昇に賃上げが追いついていないというのが正直なところ。物価の高騰分は賃上げで取り戻すべきなので、経営者側も「上がったコスト分は価格に転嫁し、儲かった分を従業員に払う」ということを、社会に対して堂々とアピールしてほしいと願っている。
―北九州市を取り巻く経済環境は。
津田 自動車産業に関しては、先行きが不透明な部分があるが、日本からの輸出は好調に推移すると見られている。日産自動車㈱では減産計画の一環で、神奈川県の追浜工場の車両生産を日産自動車九州(苅田町)に移管する。これに対し、現状では受け皿となる土地が不足しているため、地域一体となって工場用地や人材確保を含めた早急な施策が必要となる。
―現在、特に力を入れている重点施策は。
津田 「デフレマインドからの脱却」と「DXの推進」の2つ。アメリカでは、企業や従業員のマインドが日本とは異なっており、現地では「インフレがあれば賃上げする」という常識が浸透している。
日本はこれまで「コストを下げて生産性を上げる」というデフレの影響による発想が主流だったが、本来の生産性向上とは「利益を上げる」ことで、良い製品を生産し、適正に値上げをして利益を大きくすることこそが、真の生産性向上となる。設備投資などで付加価値を高めるようこれからも呼びかけを続けていく。
そして、生産性向上の手段の一つとなる「DXの推進」では、北九州市立大学が中心となり、長年「北九州の台所」として親しまれてきた旦過市場(北九州市小倉北区魚町4丁目)内に、「情報イノベーション学部(仮称)」を新設する。市場に店を構える人たちは、高齢の人も多く、市場全体としてDXの推進がかなり遅れている現状だが、市場に大学が開かれることで、学生と企業、そして街の人たちが一体となってデジタル変革を進める環境を整備していく。
―近く、北九州市の人口が90万人を割り込むとみられている。
津田 若者の就職需要が高い半導体や自動車関連、そしてITといった新しい産業の誘致活動を市と連携して進め、社会動態をなんとかプラスに持ち込みたいと考えている。
―3期目を迎えたことに伴う意気込みは。
津田 3期目は、日本経済の発展において重要な鍵となる「DX推進」には特に力を注ぐ構えで、商店街や中小企業のレベルを、日本をリードできる水準までどう引き上げるか、危機感を持ちながら街全体でDXの実装力を高めていきたい。また、新たに㈱高田工業所の髙田寿一郎社長を選任し、副会頭を1人増やして4人体制に組織を再編した。北九州の典型的な中堅製造業の経営者の感性を取り入れ、組織の機能強化に努めていく。
―新年の抱負は。
津田 昨年、物価高で苦労した分をカバーするためにも、今年はさらなる賃上げを目指し、北九州市の経済が前向きに動く1年にしたい。そして、会員数は1万社を超え、16年連続で増加しており、商工会議所が中小企業の役に立つ組織として認知されている証拠だと自負している。さらなる増加を目指し、サポート体制を強化していく。

