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持続可能な経営基盤づくり加速 西日本新聞社


週刊経済2025年12月24日発行号

田川社長、新年インタビュー抜粋

西日本新聞社(福岡市中央区天神1丁目)の田川大介社長は、本誌1月号「新年トップインタビュー」に応え、2027年の創刊150周年に向けた経営基盤や、本業のコンテンツ面強化の施策について語った。以下、インタビューを抜粋。

―2025年を振り返っての総括と昨今の新聞を取り巻く環境は。

田川 西日本新聞社が福岡に存在する意義や、地域から期待されていることを改めて肌で実感する1年だった。社長就任からは1年半が経過した。入社以来、一貫して編集に携わる仕事をしてきたが、経営者の視点で事業と向き合う中で、2025年からは幹部を集めた経営会議の冒頭で私が話す言葉の要点を全社員にメモとして配布するようにし、トップの考えを正確に、かつ迅速に共有し、組織としての一体感を高めることに力を入れてきた。

新聞を取り巻く環境としては、新聞の購読部数そのものは、残念ながら低下傾向にあり、現在は約35万部まで減少している。これはスマートフォンやウェブの普及が、紙媒体に直接的な影響を与えている結果であり、デジタル版の新聞でどれだけカバーできるかが肝だと認識している。一方で、広告に関しては企業のブランディングにおいて、信頼性の高い新聞広告を活用するケースが増えており、25年度は持ち直しの動きが出てきた。

―他社に先駆けて、デジタルの対応にいち早く取り組んできた。

田川 デジタル版の「西日本新聞me」はサービス開始から5年目を迎え、アプリのダウンロード数は70万件を超え、右肩上がりで推移しているが、紙の購読料収入と比較すると、売り上げ規模は10%に届いていない。そのためさらなる成長が経営上の大きな課題となる。最近では、ラジオのように音声で情報を流す「ポットキャスト」を配信し、記者が旬な話題を解説したり、おすすめ記事やコラムなどを音声で提供するなど新しい機能を拡充し、ユーザーの利便性を図っている。

さらに、23年に紙媒体での発行を休止した「西日本スポーツ」に代わり、スタートした「西スポWEB OTTO!(おっと)」は、速報に特化したスポーツ情報に加え、エンタメや生活情報など豊富な記事コンテンツを展開したことで人気を博し、月間の閲覧数も国内メディアの中でも上位になるほど急成長しており、期待以上の成果を上げている。

―紙面のコンテンツで特に反響の大きかったトピックスは。

田川 25年は戦後80年という節目だった。さまざまな人の家族・親族に関わる「軍歴」に注目して、激動の時代を生き抜いた人たちの目線を追った企画「うちにも戦争があった」は、多くの読者の共感を得ることができた。さらに、20代の若手記者が太平洋のナウルに行き、日本人兵士の加害と被害の実相に迫った企画「忘れられた島」も力作だったと評価しており、戦争と平和に真摯に向き合う記者が育っているという確かな実感がある。

―ほかの新聞社と連携する動きは。

田川 25年5月に、長崎新聞社と編集システムに関する提携を結んだ。記事を入力してレイアウトを組む新聞編集システムは、独自に開発・維持するには莫大なコストがかかるが、26年11月からは長崎新聞と同じシステムを使い、互いに経費削減と業務効率化を進めていく予定となっている。この編集システムでの連携を契機に、今後は記事の相互利用なども含めて、ほかの新聞社とも関係を深めていきたい。

―不動産事業の現状は。

田川 第2の収益の柱である不動産事業は順調に拡大しており、25年4月に沖縄のホテル、6月には熊本のマンションを取得した。これまで収益物件は、県内を中心に取得してきたが、今後はエリアにこだわらず、将来性や収益性が見込めるところへは積極的に拡大していく。

―グループ会社の再編などは。

田川 25年4月にインターネット広告会社の㈱マイティーエースを子会社化したことで、連結対象が12社、非連結を通して15社、新聞社を入れて計16社からなるグループ体制になった。19年にグループに入ったコインパーキング事業の㈱悠研社は25年、過去最高の売上高を記録し、印刷業のほか保険代理業、物品販売を展開する㈱西日本新聞プロダクツも、今期は最高の売上高を更新する見込みとなっている。

―26年をどのような1年にしたいか。

田川 27年に創刊150周年を迎える。現在、26年度から始まる2カ年の「グループ中期経営計画2027」と連動する形で、「グループビジョン2035」の策定を進めている。10年後の新聞社の「ありたい姿」を描くために、30代から40代半ばの社員10人を選抜し、検討チームとして議論を重ねており、今のままでは立ち行かなくなるという危機感を持っているからこその厳しい意見も挙げられている。そうした声を風通し良く言える会社風土に変えていくことが重要だと認識している。